メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)は、2016-17年秋冬コレクションを、フランス・パリで発表した。テーマは「THE PORTRAITS」。ドイツの写真家であるアウグスト・ザンダーの人物写真集――かれの写真の記録されたあらゆる階級のドイツ人の姿にインスパイアされている。
東京で披露した2016春夏コレクションは、得意技を封印し削ぎ落とした印象を受けたが、今回は真逆。加工、ハイブリッドといった三原の十八番が、より精緻かつ複雑になっている。ファーストルックの細かな迷彩の上にボーダーを配したミリタリーコートは、ヘムや袖口が切りっぱなしになっていて、縫製されていない糸が無造作に飛び出している。
オンブレーチェックのガウンは、タバコを押し付けたような焦げ加工が施されている。レザーの加工では、ヴィンテージのエンジニアブーツで“茶芯”と言われる、下地の茶色が黒の下から浮かび上がる加工のクオリティが秀逸。ジャケットのポケットや袖口などのすり切れやすい場所から茶色が浮かび上がる様は、三原の古着への深い造詣と愛情を感じさせる。
ハイブリッドは、よりチャレンジングな表現に進化。クロップド丈のワークパンツには、同色のトレンチコートをドッキング。デニムのショップコートには、カバーオールとGジャンの一部が張り付けられている。グレーのセーターの穴からは「俺が主役だ!」とばかりにフェアアイルのニットが顔を覗かせている。終盤には、パンクスピリットを感じさせるチェックのロングシャツ、クラッシュセーター、様々な写真や絵をコラージュしたN-1デッキジャケット(アメリカ海軍のミリタリージャケット)などを披露した。
カラーパレットは、カーキ、ブラック、ブラウン、グレー、ブルー、ホワイト、ベージュなど多彩。様々な階級、職業のポートレイトからインスピレーションを受けているが、上流階級というよりは戦前から戦中の労働者階級の“逞しさ”を強く感じさせるコレクションだった。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)