シャネル(CHANEL)銀座にあるアートギャラリー、シャネル・ネクサス・ホールでは、カルロス アイエスタとギョーム ブレッションによる共同写真展「Retrace our Steps - ある日人々が消えた街」を開催する。
今もなお記憶に忌々しく残る東日本大震災と福島第一原発事故。この事故がもたらした終わりの見えない状況に、写真家のカルロスとギョームが向かい合った。外国人から見た震災とは、そしてそこにある‟リアル”とは…。
開催前の写真展へ足を運んだファッションプレス。展示作品と絡めて、本展をレポートする。
■入り口は一つ、出口も一つ。
会場は格子状の金網やアクリル壁で仕切られ、5つのエリアに分かれている。そこに込められたのは‟入ってはいけない場所の区切りをつけたかった”というデザインコンセプト。
一つひとつのスポットには、「光影」「悪夢」「不穏な自然」「パックショット」「回顧」というテーマに添った作品が並んでいる。
■自然の持つパワーを示す「不穏な自然」
作品シリーズ「不穏な自然」より 2014-15
© Carlos Ayesta + Guillaume Bression
入り口を抜けると、まず待ち受けるのは「不穏な自然」シリーズ。あの事故から約5年の年月が経ち、福島第一原発周辺はどのようになっているのか。その疑問に答えを与えるドキュメンタリー写真だ。
映し出されているのは、当時の様子が思い出せないほどに‟自然へ回帰した姿”。駐車スペースや駅、そういった生活環境下を自然が覆い、人間の足跡を隠すかのように物々しく存在している。
■インタビュー動画とともに振り返る「回顧」
作品シリーズ「回顧」より 2014
© Carlos Ayesta + Guillaume Bression
カルロスとギョームが‟心で感じてほしい”と表現した同作では、福島第一原発近くの帰宅困難区域にフォーカス。原発被害者たちが当時過ごしていた場所を訪れ、日常の姿をレンズの前で演じた。
舞台となったのは、勤務先のスーパーや印刷所、休日に足を運んでいたゲームセンターやミュージックストアなど。避難民が縁のある場所と共鳴しながら、2人のアーティストと協働で創り上げる作品群は、一見ノーマルであるが、遠くから眺めると非日常的である。会場では写真作品と同時に、現地の人のインタビューも動画で紹介。
■取り残された食品を映した「パックショット」
作品シリーズ「パックショット」より 2014
© Carlos Ayesta + Guillaume Bression
本展のラストを飾るのは、「パックショット」と名付けられたシリーズ。カルロスとギョームが‟住んではいけない地区”で見つけ出した遺物を駐車場で撮影した。
写真に収められたのは、腐ったブロッコリーや割れた卵といった食品たち。中には、製造年月日が記されたものもある。時間の経過とともに、‟取り残されてしまった”現実を視覚的に伝える。
■問題は毎年変わる、だから今後も仕事を続けていく
写真家であるカルロスとギョームが取材中に思いつきスタートした本企画。その初期段階でシャネルと出会い、東京・銀座の地で写真展がこの度実現した。
展覧会前に彼らに話を聞くと「現地での問題は、経年変化で変わってくるもの。毎年毎年違う問題が出てくる、その現実を伝えたかった。そして、今後も福島の仕事を続けていこうと考えている。」とコメント。また、「自分たちが見てきたものをまとめた、いわゆる回顧展のような展覧会となった。」と本展を称した。
外国人の距離感を持って、継続的にみた福島。その興味深く人為的なアプローチに触れることで、恐ろしい出来事に新たな眼差しで向き合えるかもしれない。きっと、訪れる人にさまざまな思いを投げかける機会となるだろう。
【概要】
写真展「Retrace our Steps - ある日人々が消えた街」
開催期間:2016年6月24日(金)〜7月24日(日) 12:00〜20:00
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
参加作家:カルロス アイエスタ + ギョーム ブレッション
主催:シャネル株式会社
入場料:無料
【問い合わせ先】
シャネル・ネクサス・ホール事務局
TEL:03-3779-4001