ジル・サンダー(JIL SANDER)の2018-19年秋冬メンズコレクションが、フランス・パリで発表された。控えめなカラーパレットに感じるソリッドなムード。しかし、ファブリックは温かみと機能性にあふれたものばかりで、それがジル・サンダーらしい洗練された印象を強調する。

そんな今シーズンに、肯定的な人間の未来を見た。私たちにとって何が重要か？発展した未来を見たいか？どうしたら向上していけるのか？何が必要で重要と捉えるか？未来はきっと進歩しているとするポジティブな想いを出発点に、人間が生きる上で必要とする心地よさを具現化している。

身体を包み込むようなレイヤードのスタイルにこそ、その居心地の良さを感じられる。シルエットは、身体との空間を楽しむようなモダンなもの。アームホールは広めに、身頃もAラインやボックス型で設定し、レイヤードを着る者に楽しませつつ心地よさを完成させる。特筆したいのは、まるで羽毛で包まれているような感覚を感じられるソフトタッチのダウン。特徴的な大判のストールは、ミリタリーの人々が野営で寝る時の寝袋のイメージから生まれたもので、腰に巻いたり、首回りをくるんだりするスタイリングで登場している。

薄く柔らかいラムレザー、軽量ながら強靭なリップストップ、クラシカルかつ大胆なヘリンボーンなど、ミニマルなワードローブには素材の捻りが効いている。厚みやハリのあるファブリックは、今季のシルエットには適しているようだ。さらにはディテールに変化をもたらすことで、温かさや人間味を感じられる服へ。不完全なヘムのカット、洗いをかけたニットがその好例。また、ポイントとなるボタンはブラシをかけたアルミニウム素材で、温かさとは少しかけ離れているようだがそれがクリーンな印象を高めている。

このコレクションではアクセサリーは欠かせない存在である。先に述べたストールもそうだが、ミニマルなコートとともに身に着けられる装着式のファーポケットなどが提案された。また、シューズは、ソールをラバーで覆い、ブーツのようなシルエットを築く。加硫処理によるその構造は未来的であることを想わせるが、より人間らしさを強めているのだろう。