ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)の2015年秋冬オートクチュールコレクションがフランス・パリで発表された。
今季、ヴィクターとロルフのデザインデュオが提示したのは、ファッションとアートの関係性なのではないだろうか。展開されるワードローブはどれも絵画をモチーフとしていて、そればかりか額縁も布地を重ねて作成し、デザインとして落とし込まれている。
また、発表方法も非常に斬新なもの。モデルたちはランウェイ上で着ていたドレスを脱ぎ、その洋服が壁に貼りつけられるという作業が繰り返されるのだ。ドレスがアートワークへと変容し、またドレスとなり、そしてアートワークへと戻るという経過は、洋服を見せるというランウェイショーの概念を打ち破るようでもあり、着脱のシーンを見せることでより洋服への注目を高めているとも捉えることができる。
興味深いのは、絵という平面的なものをもとにして、これほど立体的でボリュームのあるフォルムを作り出せるという部分。美しいドレープのドレスからふわりと広がったアシンメトリースカート、羽のような広がりを持つミニドレスなどが揃う。額縁の部分は硬質なイメージを活かし、カクカクと折り込むことで動きと表情を引き出している。
ドレスに描かれた、人物画や植物画などのオランダ黄金時代の絵画は、レーザーカットのジャカードや刺繍、アップリケで表現したもの。そこに、キャンバスに叩きつけるようにインクを散りばめるアクション・ペインティングの要素を加え、力強さと躍動感を生み出していく。
今季は、アート作品に一つ一つ命を宿していく場面を切り取るように、ワードローブが披露されている。ファッションとアートとを織り交ぜた“ウェアラブルアート”が並んだコレクションのように見える。