ヴァレンティノ(VALENTINO)の2016年春夏コレクションが、フランス・パリで発表された。
明るい活気、力強い鼓動、不完全な純粋さを持つ地・アフリカ。20世紀初頭には、この地に魅了され、前衛運動の主唱者が多く集まった。人を惹きつける力のあるこの地域を改めて見直し、デザイナーデュオは今シーズンを迎えた。
聖職者のように厳かな雰囲気のロングドレスから、コレクションはスタート。次々と登場するウェアは、カットを最小限に抑えて、すっとした縦長なシルエットに整えられている。スクエア型にカッティングされた胸元で、ほんのりと官能性を漂わせながらも、ファブリックが身体を包み込むようにボディラインに寄り添い、保守的な姿勢を見せる。
コレクションでは、ブラックやダークレッド、フォレストグリーンなどで染め上げられた、深みのある服地をパレットに、いくつものエスニックモチーフが描かれた。繊細なオーガンザの上に格子状にビーズを並べたり、袖や胴体の部分にファーを差し込んだり、フリルをジグザグにあしらったりして。ロングチュニックの首元にはオーナメントを飾り、ドレスには独特の模様がプリントされている。
かつて、扮装の一手段として用いられていた「マスク」は、シューズのヒール部分やバッグなどのデコレーションとして採り入れられた。また、アーティストのアレッサンドロ・ガッジオとのコラボレーションから生まれた、ホワイトテコラッタ素材のハイジュエリーは、女性の美しさを引き出すように襟元を飾る。
今季は、洋服そのものそしてアクセサリーにも、贅沢な装飾が繰り返し用いられた。どれも精妙であるが、ハンドメイドのような温もりがある。アナログ的なアプローチとクチュールのテクニックを掛け合わせることで、強さを秘めたエレガンスを創り上げていた。