ジバンシィ(GIVENCHY)の2021年春夏ウィメンズコレクションが発表された。
クリエイティブ・ディレクターがマシュー・M・ウィリアムズに変わって初のコレクションとなる、今季のジバンシィ。自身が1017 アリクス 9SMなどで培ってきたテクニカル素材の技術や構築的なシルエットを巧みに織りこむことで、伝統的ともいえるエレガンスを基調としつつもシャープな緊張感を湛えたスタイルを披露した。
軽やかなシアー素材を使用した優美なドレスや、ドレープを巻きつけたトップスなど、気品あふれるスタイルを提示する一方で、前後に切れ目を絶え間なく連ねたドレスやパンツのように、洗練された雰囲気にも遊び心を効かせている。ウエストのベルトには、約束や感情を象徴する“南京錠”を装飾として用いており、これはバッグの留め金のみならず、ドレスといったウェアの数々にもふんだんに散りばめた。
一方で、テクニカルタフタを使用したテーラードジャケットは直線的なラインを基調に組み立てられ、極めて構築的だ。エレガントに身体に寄り添いつつも、ノーカラーでミニマルな表情に仕上げ、丈感をやや長く取り、スリムなパンツを合わせることで、シャープで張りつめたラインを際立てている。
同様に直線的なフォルムは、レザーで平面的に構成したバッグ状のトップスに顕著だ。立体である身体に合わせれば平面は引き伸ばされ、角の部分がホーンを彷彿とさせるシルエットを生み出している。それは、コレクションでもたびたび登場しているバッグのシャープなシルエットとも相呼応していよう。また、シアー素材は優美にたゆたいつつも、その下には身体のシルエットを直接的に透けて見せるようにコーディーネートされ、むしろ身体をまなざすストイックな視線さえ仄めかされている。
プリントやレジン加工を施したデニムウェアのように、新しい技術を活かした斬新なコーティングも目を惹く。こうした技法は、手作業で緻密な刺繍を施すことと同様に手間がかかるものであり、伝統的表現だけに留まらず、技術が生みだす独特の表情に目を向けるというマシュー・ M・ウィリアムズの新鮮な感覚を反映しているといえよう。