スポーツマックス(SPORTMAX) 2022年春夏コレクションは、アメリカの現代音楽家ジョン・ケージが遺した音楽の研究に着想を得た。演奏者が一切音を奏でることなく、聴衆はその場で起きる音楽を聴くという代表作「4分33秒」を好例に、彼が描いた二極性<雑音と静寂>の著しいコントラストを、ファッションを通じて表現していく。
ケージによるコントラストの研究を顕著に表現しているのは、バリエーション豊富なファブリックからだ。肌を透かせるほど軽やかなガーゼやジョーゼット、チュールは、肌を覆うレザーやサテン、ジャカード、コットンと一線を画し、歩みを進めるごとに動きに富んだ“たおやか”な表情を映し出す。またそのシアーな素材を活かしたカラーコントラストも演出。ヌーディーなドレスからは、ネオンイエローのアクティブなショーツが顔を出す、意外性のある色遊びが印象的だ。
ジョン・ケージは、音楽だけでなく、生涯の友であった振付師のマース・カニングハムと共に<ダンスの領域>も追及した人物であった。そんな彼のライフワークにオマージュを捧げ、心地良く身体に馴染むニットやジャージウェアもランウェイの上に登場。オールインワンはニットで表現することで、野暮ったさのないミニマルな表情へ。一方ジャージ素材で仕上げたドレスは、従来のエレガンスさはそのままに、身体の可動域を広げた機能的な一着へと昇華させている。
コレクションでは、ミニマルなシルエットをベースにしている分、ボリューミーなピースが、真っ白のランウェイでより一層引き立てられていく。中でも目を惹いたのは、まるで空気を含んだかのように、ふんわりと動きのある表情が印象的なブラックドレス。基本的なシルエットとボリュームの間の制御された衝突から、演劇を見ているかのような錯覚を覚えさせる。
また今季は、ボタンやベルトに代わるテープや、パンツのリボン、さり気ないドローコードなど、細部にまでこだわったディテールが起用されているのも特徴だろう。特筆すべきは、"コルセット”を連想させるディテール。コルセットの"枠組み”だけを残したキャミソールや、ドローコードに通した象徴的なテープをあしらったパンツやドレスは、断片的でありながら、フェミニティを深く表現する役割を担っているように感じられる。
カラーは、ヌード、ホワイト、エクリュのソフトな色調をベースに、オレンジ、フクシア、イエロー、ライトブルー、ライラックといったアクセントカラーを差し込んで。また存在感溢れるアクセサリーも特徴で、足元にはボリューミーなプラットフォームサンダルを、顔にはオーバーサイズのアイウェアをそれぞれセレクトしている。