エー ディグリー ファーレンハイト(A DEGREE FAHRENHEIT)が2014-15年秋冬コレクションを発表。光の色を定量的な数値で表現する尺度「色温度(単位 K=ケルビン)」に注目し、中でも日中の曇り空の自然光に該当する色温度、「11323.4F°(6000K)」をテーマとした。
曇天という晴天と雨天の間の不安定な天色にインスパイアされ、その移ろいゆく気温や温度を形にしたカラーパレットは、まるで空模様のようにショーの間刻一刻と変化。オールブラックスタイルに始まったシックなトーンは、美しいブルー、そしてグレーがかったオフホワイトと少しずつ明るみを帯びていった。そこには、所々ビルの間から差し込んでくる光を表現しようとしたデザイナーの意図が見てとれる。全てがモノカラーのコーディネートであるにも関わらず、エレガントで洗練された印象を残したのは、後方から見ても美しい、こだわり抜かれたカッティングのおかげ。
シルエットは直線的でマテリアリスティックなところから、ソフトなAライン、そして最後は流れるようなドレープが作るタイトなラインへと少しずつその様相を変えた。それに合わせ、素材もハードで硬質な雰囲気のものから、柔らかで滑らかな手触りのものまで幅広い材質を使用。風になびく、計算しつくされたフォルムを生み出した。
印象的な小物使いも今季の特徴のひとつ。デザイナーがやってみたかったと語った異素材の太めのベルトのウエストマークは、ルックに都会的な雰囲気を添えた。また、オーストラリア発の帽子ブランド、ヘレン・カミンスキ(HELEN KAMINSKI)とのコラボレーションによって登場した帽子は、シックな黒のハット。テーマに合わせ、日光を遮断する雲をイメージして作られたという。
クライマックスには、少しずつ色味の違うトレンチコートを身にまとったモデルがランウェイに縦一列で整列。朝から夜までの空の様子を表現した演出には、観客も目を奪われた。それまでどことなくアンビギュアスな空気感のあったランウェイに、「色」が映えたその光景はまさに、雲の合間から太陽が現れた瞬間だったのかもしれない。