ディオール(DIOR)は、2025年春夏ウィメンズコレクションをフランス・パリで発表した。
クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリは、今季あらためて服の意味を深く掘り下げ、"身体を飾る”という服の目的と機能にフォーカス。ファッションの原点に立ち戻ったうえでディオールのアーカイブを辿り、クリスチャン・ディオールが1951-1952年秋冬 オートクチュール コレクションにおいてデザインした「アマゾーヌ」ドレスに、自立したフェミニニティを見出した。
マリア・グラツィア・キウリはこの「アマゾーヌ」ドレスを起点に、数々のアーカイブを再解釈。特に、身体性を際立たせるようなカッティングのウェアを提案している。
散見されたのは、片方のデコルテをあえて見せるような造形のアシンメトリージャケットや、ワンショルダーのタイトなドレスなど、服の布地と露出した肌がグラフィカルにコントラストを描くようなデザイン。ブラウスは片方の襟を脇まで落とし、テーラードジャケットは右肩が剥き出しになるようなパターンにより、まとう、という行動を通した身体と服の関係性を強調した。
この他にも、胸元が大きくV字型に開いたドレスや、襟が緩やかに翻ったようなデザインのトップスなど、大胆に肌を見せるルックが多数披露されている。ただし、そのいずれも露出によるセンシュアルさではなく、身にまとう時の身体に対する自覚的なアティチュードや、凛とした力強い佇まいが際立っているのが印象的だ。
2024年に開催されたパリオリンピック・パラリンピックからのインスピレーションも見受けられる。競技用のプロテクターを思わせるハーネスをあしらったジャケットやトップス、モータースポーツを想起させるチェッカーフラッグを配したセットアップ、トレーニングウェアのようなブルゾンやハーフパンツなど、スポーティーなウェアがブラック&ホワイトのモノトーンで展開された。レースアップのスニーカーブーツや、ハンズフリーのショルダーバッグといった小物もアクティブな装いに一役買っている。
軽快なメッシュドレスやジャージパンツのサイドラインとともにあしらわれているのは、極端に細長く伸ばされた“Miss Dior”ロゴ。また、大胆に白黒の2色を切り替えたコートにも“Miss Dior”のロゴをダイナミックにあしらい、鮮烈なアクセントを効かせた。
ディオールらしいエレガンスを表現するのは、身体の躍動と呼応するかのような、動きのある素材使い。光を受けてきらめくフリンジを配したスカートやボディスーツをはじめ、時に身体にフィットしつつ、動きに連動して伸縮するジャージー素材のドレス、細やかなドレープやプリーツを施したオールブラックのシフォンドレスなどが軽快さを演出。ショーの終盤を飾ったシアーなオーガンザのドレスは、肌の上に薄く重なり合う生地が繊細に揺れ、浮遊感のある佇まいを描き出している。