トム ブラウン ニューヨーク(THOM BROWNE. NEW YORK)の2015年春夏コレクション。
ショーの舞台となったのは、石像に扮したモデルの立つ、芝生い茂る庭。そこにシアサッカーのスーツを着た男が、芝生を刈り取りながら登場、ショーの始まりを告げた。
今季のコレクションは、モデル扮する6人姉妹が月曜から金曜日まで、それぞれのテーマに沿ったスタイルを披露。月曜日がスーツ、火曜日はカーディガンスタイルのジャケットにシフトドレス、水曜日はウーブン素材のツインセット、木曜日はフィット&フレアドレス、そして金曜日は、Tシャツスタイルのブラウスとストレートスカートだ。女優のダイアン・キートンのナレーションとともにショーが展開される。
ミニマルなセットアップのルックが現れた序盤に始まり、カーディガン風のジャケットにひざ丈ドレスのコーディネート、コクーンシルエットの着物スリーブコートをメインにしたスタイルへと流れ、最後はブラウスとストレートなスカートのカジュアルなルックへ。そうして移りゆく中でトムは、持ち前のテーラード技術を惜しげもなく披露したかと思えば、キャンバスにツイード、ミンク、PVCといったふうにはらはらと素材使いを変え、圧倒的なクチュール技術を披露する。
そこに重ねて、過剰なまでの彩りを添えたのは、鮮烈なグラフィックとトラッドな柄だった。テーマにもなった花や蝶のグラフィックに加えて、千鳥格子やチェックといった伝統的な柄も登場し、時にはそれらが混じり合う。ドレスやジャケットを模したヘッドピースもまた、空想が現実へ降りてきたかのような、独自の世界観を演出していた。
アメリカントラッドを大胆にリサイズし、現代的なアメトラのスタイルを築いたことは、トムの功績として知られる。しかしながら、今や彼は、伝統を用いつつ、“着るための衣服”という従来のイメージを飛び越えようとしている。ルールに縛られてきたトラッドな服を、クチュールライクな“魅せる服”へ。トム・ブラウンの服作りは、さらなるステージに差し掛かっている。