mame (マメ)が、2015年春夏コレクションを発表した。今季のテーマは「passing」。
宮本輝の『錦繍』を読みながら、6ヵ月の旅に出たデザイナーの黒河内真衣子が贈る今シーズンは、紫色がキーカラーに。中央アジアのシルクロードを超えて辿り着いたウズベキスタン、九州・美山で彼女が出会ったものが、ワードローブに美しく描かれている。一瞬一瞬の出来事が通り過ぎ、過去になっていくことを前向きにとらえ、ひとつの出会いを未来に残すように、丁寧な物づくりで表現した。
6月に旅に出た黒河内は、紫陽花、藤やパンジーを見つける。さらに読んでいた本の主人公が葡萄色の服を着ていたことからも、様々な「紫」がコレクションに登場し、全体の核となった。クリーンな仕上がりのチェスターコートやハイネックのクロップドトップス、レースやコットンジャカードのワンピース、カットソーなど多くの服に採用され、凛とした色彩を放った。またメインカラーを中和するように取り入れられたサンドベージュは、大分県の小鹿田焼からインスパイアされたもの。リネンのコートやペンシル型の巻スカートなどを優しく彩り、ナチュラルな表情をうかがわせた。
今季のmameは、スポーティなテイストが気分。特にブルゾンは象徴的なアイテムで、繊細なレースを用いたもの、袖をメッシュにしたものなどが展開された。また薩摩焼の香炉のデザインからヒントを得たという、メッシュ地はVネックのプルオーバーや膝下のフレアスカートなどに。シルエットや刺繍などのディテールで、いわゆるアクティブな印象には陥らず、あくまでブランドならではの女性らしさが保たれているのが特徴だ。
そして全国各地、デザイナーが自ら足を運んで選んだ素材は、mameにとってなくてはならない存在。細やかな手作業による刺繍はこれまで通り、群馬県桐生市の職人が手掛けているほか、二重織された麻は、100年の歴史をもつ愛知県一宮にある織機でゆっくりと丁寧に仕上げられたもの。また最終ルックの、ロングドレスに見られる刺繍も、素材選びにこだわった渾身の一作。旅の途中で訪れた、八丈島の植物で染められた黄金の糸を使用することで、深みのある立体的な模様を完成させた。なお、静岡県で撮影されたという各ルックヴィジュアルとともに、それぞれモデルの後ろ姿や手元などを映し出した写真は、八丈島出身のフォトグラファー小浪次郎が撮影した。
mameは2013年度『毎日ファッション大賞』で新人賞を受賞したほか、本コレクションよりパリでも展示会を行うなど、毎シーズン着実に進展をみせるブランド。日本の文化を大切にしながら生まれた服は、「めまぐるしい日常の中で、ふと足を止めて振り返ってしまう服になれたら、私は幸せ」という、黒河内の真摯な想いが表れている。