イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)が2015-16年秋冬コレクションを発表した。暗くなった会場をスポットライトが照らし出すと、その先には8本のギターがあった。奏者はオープンリールアンサンブル(Open Reel Ensemble)の和田永。ヨーロッパを拠点に活動するチヤコ(Chiyako)をボーカルに迎え、様々なギターの生み出すあたたかな音色を響かせていく。
ここ数シーズン、イッセイ ミヤケのコレクションで使用されてきた素材がある。「3D Stream Stretch」。これは折り目があらかじめ織り込まれ、スチームをかけるだけで立体的な表情をみせる素材だ。今回は、さらに色への改良がなされ、大きく3つのパートに分けられたコレクションの中に取り入れられている。
一つ目は、影に色がついたウェアのパートだった。登場するアイテムには、凹凸のある幾何学的な織りの生地が使われているのだが、そのくぼみ部分には、鮮やかなカラーリングが施してある。コート、セットアップ、ケープ、スカート、そのどれもがゆったりとしたシルエットで、控えめな華やかさを持つ。そして織りの凹凸によって、見る角度が変わるたび、仔細な表情の変化をみせる。
次に現れたのが、まるでレンガのような立体的デザインを、ジャカードで表現したパート。そして続く3つ目のパートこそが、今季を象徴するアイテムの連続だったと言えるだろう。それは「多面体」のテキスタイルを用いた、カラフルなスタイル。身体や柄の流れに沿って織り込まれた、直線的な折り目は、生地にたくさんの面を生み出し、色彩の魅力を最大限に引き出す。まるで万華鏡をのぞいたようなグラフィックを、コートやドレスに広げていった。
最後のウォーキングを終え、モデルがいなくなると、真っ暗なランウェイを、いくつかのスポットライトが照らし出した。フィナーレの予兆。その光の円に重なるように、再びモデルが現れ、立ち止まる。身にまとっているのは、透けるように編まれたノースリーブニットとタイツ、ミニ丈のスカート。すると次の瞬間、全員が一斉に、腰に巻きつけられていたひもを取り払い、くるくると回り始めた。ミニ丈に折り畳まれていた無地のスカートは、風を受けて大きく広がり、カラフルな螺旋状の幾何学模様が露わになる。そして、空間を幸せなムードで満たしていった。会場の拍手も、そのムードの高まりに呼応するように大きくなっていく。そんな大喝采の中、ショーは幕を閉じた。