TOGA(トーガ)の2012年春夏コレクションのタイトルにもなった”Vicky’s nightmare”は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話「赤い靴」が原作の1948年公開のイギリス映画。マーティン・スコセッシ監修のもとオリジナル・ネガの修復作業がされ、2009年に蘇ったこの映画には、物欲などにより信仰心が失われるという寓意が込められており、バレエという芸術の魅力や名声に囚われた主人公が、精神的崩壊や憎悪・幻想によって精神の本質や、もっと大切なものを失っていく姿が描かれている。
プリマドンナを目指すバレリーナのヴィッキーの栄華と最後の姿にインスパイアされた今季のコレクションでは、大きく引き伸ばしてぼかされたフラワー柄が幻想的なイメージを生み出した。カラーパレットも、レモンイエローやミントグリーン、ライトブルーなどのパステルカラーにパープルや黒を合わせたエキセントリックなコントラストがポイント。さらに、ハイウエストを強調したボディコンシャスなドレスや、肩パットでシャープで構築的なシルエットを作り出したドレスやジャケットにはシースルーを施したり大胆なドレープを取り入れたりと、あいまいさと強さという両極端な要素を混在させて、現実と幻想を行き来する主人公の精神世界を描き出している。
トゥーシューズのようにリボンで編み上げるパンプスや、チュチュのようなチュールのスカート、ショート丈のトップスなどで、バレリーナのエッセンスも盛り込まれている。シースルーのインナーがついたツーウェイコートやアラビアンパンツ、スカートとパンツが合わさったようなパンツなど、着る人の個性をさりげなく引き立ててくれる、エッジィなアイテム達は今季も見逃せない。