パリファッションウィークで発表された、ジバンシィ バイ リカルド ティッシ(Givenchy by Riccardo Tisci)の2012−13年秋冬メンズコレクション。クリエイティブ・ディレクターのリカルド・ティッシは、アメリカンドリームを基にクリエイションを構築。シャープなスーツとグラフィカルなスポーツウェアに、アメリカの星条旗とミノタウロスを融合させた。ミノタウロスは、ギリシャ神話に登場する牛頭人身の怪物で、己の欲する物は全て手に入れる力強さの象徴的存在でもある。
カラーパレットはブラック、マリンブルー、チェストナッツブラウンを中心に、パッションレッドやホワイトがアクセントを効かせた。構築的なトロンプルイユのレイヤーリングは、張り感のあるウールやレザーのピーコートに新鮮な印象をプラス。デニムは明るい色調から暗めのインディゴまで、様々なウォッシュ加工で展開されている。
注目はこの2つのルック。1つは、ブルーの生地にコットンの赤いグログランテープを施した1950年代のアメリカンワーカーウェアのジップジャケットだ。色彩、星といった星条旗の要素を分解し再構築させ、スカートを組み合わせた。2つめは、ポニースキンのような効果を施したカーフレザーのスパンコールで装飾したベストを、レザーのバイカージャケットやボンバージャケットの上にコーディネートしたもの。クチュールメゾンならではの職人技術が、随所に光っている。
アクセサリーも特徴的だ。シューズは、イタリアの移民達がアメリカに渡った頃を思わせるダービーシューズを、ギャングスタイルのトレーナーシューズに置き換えている。また全員のモデルがミノタウロスをイメージしたノーズリングを着用。ブラックやペールゴールドのジェットクリスタル、エナメルコーティングしたスターのリングが、男性的な荒々しさ、沸き上がる情熱を象徴しているかのようだ。
エッジ効いたエレガントなシルエットとラグジュアリーなスポーツウェアを結びつけるというティッシ自身のシグネチャーを再構築し、進化させたコレクション。