ジル サンダー(JIL SANDER)の2019年春夏ウィメンズコレクションが、ミラノ・ファッションウィーク初日の2018年9月19日(水)に発表された。
9月下旬に差し掛かったとは思えないほど、陽気な気候のイタリア・ミラノ。ジル サンダーのランウェイショー当日は、少し歩くと汗ばむほど温暖で、まばゆい陽射しが降り注いでいた。ショー会場は、この朗らかな天候を予測していたかのような特別な空間。イタリアの伝統的な菓子パン・パネットーネの工場だという建物は、天井が抜かれ、上から明るい陽射しが差し込んでいる。ランウェイの至るところには植物が飾られ、開放的な雰囲気が広がっていた。
会場を包み込むムードとリンクするように、ジル サンダーの新作はのびのびとした印象。風にのって流れるように動き回るロングドレス、ふわりと広がったミニ丈のワンピース、ボクシーシルエットのシャツなど、シルエットの緩急が激しく、各々がそのテキスタイルの長所を楽しむようにデザインされた個性的なピースが揃っている。
今季の一つのテーマとなったのは、女性服の根本的な見直しだ。現代女性に必要なものは何か、立ち止まって考えなおすことで生まれたのは、相反するものの融合。フレアなミニスカートとワークシャツのコンビ、スキューバ着想のスポーティーなファブリックで仕立てたセットアップ。一見交わることのないものたちが、そのアンバランスさを楽しむようにミックスされている。
ファブリックは、ルーシー&ルーク・メイヤーの勤勉さが垣間見える、厳選素材を使用。過去には、新作を作るため約200通りの生地を作って試すほど、テキスタイルにこだわりを持つ彼らは、今回イタリアと日本の工場でテキスタイルを作り出した。ボックスシルエットを容易に描き出すハリ感のある素材や、ボディにそっと寄り添うニット地、製品が出来上がった後に染めるガーメントダイを繰り返したオーガンザなどを用意している。
一方で、彼らのポップなアイデアは、各ピースのディテールに反映。特に、ルーシーがお気に入りだという拡大された袖口が印象的、シャツやワンピースなど繰り返し登場している。また、前と後ろを逆転させたアンバランスなデザインも起用。前から見るとプレーンなデザインなのに、後ろをみるとボタンが並んでいたり、大きくVの字にカッティングされていたり、肩甲骨手前くらいまでジップが配されていたり…と、バッグスタイルに意外性を持たせたデザインも多く取り入れられていた。
今シーズンのアイコンとなるのは、女性を描いたドローイングのモチーフ。「女性服の見直し」を一つの起点とした今季らしいアイコンは、女性のヌードをあらゆる角度から捉えたものだという。彼らの遊び心によって、ビックサイズのニットにパッチのように張られたり、前身頃に大きくあしらわれたり、シャツの上に刺繍で装飾されていたりと、様々な形で表現されていた。
しかし、最もパンチが効いていたのは“厚底下駄”の登場だ。日本からインスピレーションを受けて、太い鼻緒に分厚いソールを組み合わせた下駄は、プラットフォームサンダル風に変身している。オープントゥのレッグカバーとミックスされ、新しいフットウェアのコーディネートを提案していた。