独特の世界観を発信し、3シーズン目を迎えた「マヌ(MANU)」の2013年春夏コレクション。マヌは、2010年に勢理客徹(Toru Serikyaku)と村田由美子(Yumiko Murata)が設立し、その独特なデザインワークや、ファッションの固定概念に縛られない表現が注目を集めている。ブランド名は、ヒンドゥー神話に登場する人類の始祖が由来だ。
今回のテーマは「-INWARD- 内に秘めるもの」。小さな点が集まり、大きな物となっていく様や、細胞や胎児、内臓など、人間の根本にある脆くも強い存在を表現した。また、物質的なものだけでなく、胸に秘める思いや衝動など、目には見えずとも命のほとばしりとも言える心のエネルギーをも描いている。ゆったりとしたシルエットや手になじむ素材の風合いなど、マヌの特徴が惜しみなく発揮された。
注目は、まるで血管が透けて見えるような複雑に絡み合った柄。色調を押さえた優しい風合いのリネンに、あえて強いイメージの柄をハンドプリントで乗せることで、人間の脆さと内面にある強さを結びつけた。画家でもある勢理客が手掛けた図案を布地に1版ずつ施すため、1着に3日以上かかることもあるという。「立体におこしたときの柄の配置まで、深くイメージしながら作るのは難しい作業。けれど、デザインをしたら後は工場に任せっきりというよりも、手間をかけることで私たちが目指す本当のものづくりができると思う」と彼は語る。
絵画や造形物制作という彼らの経歴から生まれた、ユニークな表現方法も印象的だ。胎児の形をしたレザーバッグは、建築資材を使って彫刻のように形をつくり立体裁断によりパターンを制作。手に抱えると本物の赤ちゃんを抱いているような質感やフォルムに不思議と惹き付けられる。また、内蔵をイメージしたアクセサリーは桐のかんな粉で制作されているため、驚くほど軽い。ブローチとして身に着けても服の形を壊さず、全体を調和させてくれる。