マルニ(MARNI)は、2020年春夏メンズコレクションを、2019年6月15日(土)にイタリア・ミラノで発表した。
一面ネットで覆われた会場の天井は、無数のペットボトルやプラスチックで埋め尽くされていた。照明が青いライティングに切り替わると、海の中から海面に流れ着いたプラスチックの廃棄物を眺めているような感覚に。今季のコレクションでは、文明の発展や便利さと引き換えに堆積したプラスチックに象徴されるように、人工と自然が衝突しながらも不均一に調和している様を描き出した。
散見されたのは、熱帯地域を彷彿させるアクティブなルック。袖をまくり上げたカジュアルなジャケットスタイルにはスカーフを組み合わせ、ボーダーシャツにはまっさらなホワイトのパンツをスタイリング。レザーシューズは踵を踏んで、海際を歩く時のような開放感を感じさせる。シャツやジャケットの所々にあしらわれた、日本人彫金家の長井一馬によるシュールな動物のブローチも活動的な雰囲気を強める。
さらに、フィールドジャケットとパンツのセットアップも多数登場。セットアップは、カモフラージュ柄やトロピカルな花柄、グラフィカルなチェック柄など、豊かなバリエーションで登場した。
ペイント風の模様を施したシャツやパンツは、絵の具の感触を残したような躍動感のある色彩が印象的。ムラ染めの織り成すグラデーションや、白い部分を残して染めたブラウンとベージュのカラーブロックのセットアップは、自然の中にある柔らかな色彩を思わせる。ウェアに投影されていたのは、“人の手”によって表現された色彩や叙情的な風景だ。
ジョージアの芸術家シャルヴァ・ニクヴァシヴィリによる、新聞紙とテープで粗野に形作った帽子や、モデルが引き摺るようにして手に持っていた、収穫用袋のような大きなバッグ、端切れや切り捨てた生地から作られたビーチサンダルもまた、漂着物を思わせる。バッグには手描き風のイラストで植物が描かれている。大量生産されるプラスチックとは対照的な、プリミティブなクラフト感が、逆説的にプラスチックに溢れた海の風景を浮き彫りにするかのようだ。