ヴァレンティノ(VALENTINO) 2020年秋冬ウィメンズコレクションが、2020年3月1日(日)にフランス・パリで発表された。
今シーズン、クリエイティブ ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリが向き合ったのは、“個人の人間らしさ”。着こなしを取り去る一方で、表情やジェスチャー、立ち居振る舞いを際立たせてくれる“ユニフォーム”から着想を得たコレクション制作を行った。
モデルたちが纏うドレスの共通項として多く登場したのは、ブラックやブルー、グレーといったテイラード。ロング&リーンのシルエットに、足元はかっちりとしたレザーシューズといった組み合わせを貫きながらも、それぞれのドレスには、女性の美を引き立てるあらゆるアプローチが隠されている。カッティングや素材のチョイス、そして変化球を加えたフォルム。ワントーンを基調とするスタイリングの中だからこそ、それぞれの異なる美がより一層明確となる。
中でも目を惹いたのは、1ルックの中で、相反する要素をドッキングさせたスタイリング。シアー素材をボディに差し込んだブラックのフレアドレスは、かっちりとしたフォルムのレザージャケットをレイヤードすることで、そのセンシュアルなドレスの表情をより強調。また硬質なレザーが生み出す緊張感も相まって、フェミニンな要素だけでは生み出せない危うい色気を醸し出している。
ショーの中盤に差し掛かると、ランウェイのドレススタイルには、メゾンと縁のあるフラワーモチーフが次々と現れる。鮮やかに咲き誇るもの、モノクロとなって儚げにうつるもの、まるで写実画のように瑞々しく描かれているもの…。自然界がそうであるように、ドレスに現れたその花々にも優劣はなく、女性の美を引き立てる象徴として、多用されている。
そしてショーの終盤に差し掛かると、クチュリエの繊細な手仕事が伺えるエレガントなドレスが登場。絶妙なグラデーションカラーで輝くブラックのロングドレスや、総スパンコールの煌びやかなパンツドレスといったピースが観客の視線を奪っていく。そしてその中にはもちろん、花をモチーフにした一着も。儚げなオーガンザ一にビーズ刺繍を施した花々は、朝露でキラキラと輝く自然界の姿を彷彿させると同時に、ありのままの女性の美しさを讃えているようにも感じられた。