タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)は、2022年春夏コレクションを、GARDEN新木場FACTORYにて2021年9月21日(火)に発表した。
2018年春夏コレクション以来、タカヒロミヤシタザソロイスト.が東京でショーを開催するのは約4年ぶり、ランウェイショー形式での発表はパリで披露された2020-21年秋冬コレクション以来となる。椅子や床、壁など全て黒で統一された会場内は独特な雰囲気が漂っていた。真っ暗な空間の中にランウェイを照らすライトが灯ると、どこか祝祭のようなムードが場内を満たす。厳かでありながらも、包み込むような優しさや明るさを感じさせる空気が流れていた。
「Pause≒Play」と銘打たれた今季はデザイナー・宮下貴裕の現在の心情を直接的に反映させたものとなっている。今季のクリエーションにあたり、「ファッションを止めてはいけない」と唱え続けてきた宮下自身があえて一時停止し、全てを見つめ直した。新たな再生(Play)ボタンを押す瞬間に向けて、まず一時停止(Pause)することからスタートしたコレクションには、一貫して洋服に向き合い進化させ続けてきた宮下の意志とクリエイティビティが凝縮されている。
中でも印象的だったのは、大胆なドッキングやパッチワークのデザインだ。グレーのテーラードジャケットには、断ち切りの白い布地があえて不均一な形で縫い付けられ、裾は裏の構造を見せるようにして折り返されている。曲線的なパターンによってうねるようなステッチが身頃を走り、PVCのパーツやテープといった意外性のある素材使いがエッジを効かせる。
パープルのキルティングベストにはライトブルーのニットポロシャツのパーツを、グラフィカルなカットソーにはレースの付け襟をプラス。ブラックのキルティングベストにはホワイトのモッズコートを短くカットしたようなパーツを組み合わせることで、遊び心のある構築的な佇まいを提示した。
さらに、MA-1の裾部分のみをパンツのウエストに重ねることで、あたかもMA-1をジャケットの下に重ね着しているかのような“だまし絵”的レイヤードスタイルも登場。部分的に異なるアイテムの要素を取り入れることで、独自のバランス感と抽象性を帯びたルックを完成させている。
加えて、部分的に切り込みを入れることで変形させたデザインも目を引いた。たとえば膝の辺りに切り込みを入れたパンツは、切り込みによって生まれた穴に足を通して着ることでハーフパンツのような佇まいに。脚の付け根の近くに施された穴から足を通すと、脚の後ろからズボンを当てているような格好になる。ディテールそのものはシンプルながら、布地が体を覆うはずの部分をあえて晒すという脱構築的な発想によってアバンギャルドな印象を強めている。
近年のタカヒロミヤシタザソロイスト.は主に白黒を基調としたモノトーンのコレクションが続いていたが、ウェアのサイドや裾などにさりげなく配されたカラースケールに象徴されるように、今季はオレンジ、ライトブルー、レッドなどの鮮やかな色彩が目立った。オレンジやレッド、ライトブルーに彩られた立体的なキルティングベストや、爽やかな水色のシャツ、イエロー、レッドのグラフィックを配したカットソーといったウェアに加え、サイドゴアブーツにもレッドやブルー、イエローなどの色彩でペイントが施されている。