アーガイルとは、数色の菱形の連続で構成されており、その中心を辺に並行した線が交差する柄である。スコットランドのアーガイル地方の氏族のキャンベル家をはじめ、名前の由来は諸説あるが、いずれにせよイギリスとスコットランドを代表する伝統的なパターンであることは間違いない。
トム・ブラウンが手掛けるモンクレール ガム・ブルー(MONCLER GAMME BLEU)の2014-15年秋冬コレクションは、その伝統素材を三ツ星シェフが調理した極上のフルコースだ。ショーの前に、今シーズンから同ブランドのレディースをスタートすることを発表し、メンズ30体、レディース22体で構成したコレクションは、いくつかの箸休め(斜めのタッタソールやタータンチェックなど)を挟んだものの、ほぼ98%が菱形で埋め尽くされている。それを最初から最後まで全く飽きさせずに見せる手腕には敬服する他ない。
毎回スポーツからインスピレーションを受けるトムが、今回俎上に乗せたのは「ゴルフ」。といってもアスリート的な現代のゴルフではなく、ニッカボッカで優雅にコースを廻る古き良き時代の貴族のスポーツとしてのゴルフだ。アイテム的にはショート丈・ロング丈のジャケット、キルティングコート、ダウンケープといつもの定番の形が中心だが、そこにコレクションを象徴するニッカボッカを加えることで、定番に新しい魅力が生まれている。ゴルフグローブ、キルト付きのゴルフブーツ(!)もスパイスとして主役を引き立てている。
初お披露目のレディースは、メンズライクな構築的なジャケットに膝下丈のストレートパンツ、レガース的な脛当て、タッセル付きのヒールブーツを合わせるのが代表的なスタイル。白地のピンクとグリーンの菱形をイントレチャートで表現していたコクーンシルエットのスカートのルックや、ブラックとグレーでの黒装束のアーガイル、アーガイルを極限まで大きくした女王様ドレスも、楽しくて可愛いらしい。
カラーパレットは、グレー、ブラック、レッド、グリーン、ピンク、ホワイト。素材は男女共通で、ツイード、コーデュロイ、ウール、カシミヤ、羊の毛皮などを、織り、編み、プリントの最新技術を駆使して菱形に調理している。それにしても、こんな格好でゴルフをしてみたいものである。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)