ポール・スミス(Paul Smith)の2023年秋冬ウィメンズコレクションが発表された。
19世紀末から20世紀前半にかけて、それまで主流であった伝統的な枠組みに対して前衛的な形式や手法を目指した芸術運動“モダニズム”。
今季のポール・スミスは、そんなモダニズムの建築とデザインにインスピレーションを受け、伝統的なテーラリングやイブニングに、大胆なプリントやフェミニンなエッセンスを融合。ポール・スミスらしいひねりの効いた、コンテンポラリーなテーラードスタイルを提案する。
目を引いたのは、クラシックなテーラリングやイブニングウェアといった伝統的なメンズウェアのコードを、フェミニンに再解釈したウェアの数々だ。たとえばタキシードは、クロップド丈のタキシードジャケットとスカートのセットアップや、ピンクのストラップドレスに再構築されている。
直線的なショルダーのテーラードジャケットは、前合わせのカットアウェイディテールや、極端に絞られた“砂時計風”のウエストといったシェイプで、フェミニンとマスキュリンの絶妙なバランスを実現。また、いずれのジャケットもヘムラインはミディ丈、マキシ丈、フロアレングスと長めにデザインされ、昼夜を問わない着こなしが想定されているのも特徴だ。
モダニズムの影響を彷彿とさせる抽象的なプリントは、アンティークのインテリアや室内装飾のテキスタイルに着想を得たもの。パッチワークのようにデザインされた「ボタニカル コラージュ」プリントや「ラグ」プリントが、フロアレングスのドレスやニットドレスで登場し、今季のコレクションに軽快なムードをもたらしている。
またプリントをテーラードアイテムと大胆に掛け合わせることで、クラシックな要素をコンテンポラリーなムードへと転換。伝統的なツイードの柄を水玉模様で描いた「フレックス」プリントや、トラッドなオーバーコートやスーツに重ねられた「ビッグフラワー」プリントは、その好例と言えるだろう。
カラーパレットは、ブラック、グレー、ホワイトを基調に、バーガンディ、ブラウン、モーブといった秋らしい温かみのある色調で。時折差し込まれるコバルトブルーやパウダーピンクといった、明るく大胆な差し色が印象的だ。