ヴェイン(VEIN)の2023年秋冬コレクション「ニューノーマル(NEW NORMAL)」が、2023年3月15日(水)、東京の新国立競技場にて発表された。アタッチメント(ATTACHMENT)の2023年秋冬との合同ショーとなる。
今季のヴェインは、多層な黒色の彩りを描く画家・彫刻家のピエール・スラ―ジュや、光といった外的な要因によって時空感覚を変質させる現代彫刻家・アニッシュ・カプーアの作品に着想。「一着の服を介して対話が発生することが大切」とデザイナー・榎本光希が語るように、服をみる驚きや発見を織り交ぜながら、“Illusion of your eyes(幻視)"というテーマを表現した。
たとえば、ウールとポリエステルの質感の違いで色味、光沢にムラを出したブラックのランダムウールファーは、“黒”だけで多様な表現を行う作品で知られるピエールスラ―ジュの影響がうかがえる好例だ。また同時に“黒”というカラーは規律の中にこそ個性は際立つ、というブランドのミニマムかつ多彩な側面と呼応しているように感じられる。
立体的なダウンジャケットやオープンカラーシャツ、まるで作品そのものを落とし込んだようなグラデーションが印象的なジャケットなど、黒い衣服の上で行われる表現は実に多様。手染めによる色ムラや絞りによる皴の入り方に至るまで、多彩な群像を生み出している。
ディテールもまた、黒に“色どり”を加える要素として大きな存在感を放つ。テーラードジャケットのラペルにあえて残されたほつれや、カーディガンやベストに配された光沢のあるアイコニックなジップディテールはその好例と言えるだろう。とりわけブランドのアイコニックなディテールとなりつつある後者は、今季において全体のムードを引き締めるように、洗練された統一感を演出していた。
また、こうしたモノトーンのカラーパレットに軽やかでリズムを加えるのが爽やかなブルーを基調としたアイテムだ。グラデーションジャカードデニムを使用した象徴的なリサイズデニムパンツは、レギュラーフィットの股ぐりに生地を足したようなデザインに。複数の色を混ぜ合わせてハケを用いた手染めのウールギャバ、生地を縮ませたブルーシャツには、色の移り変わりを見出すことができる。