オールモストブラック(ALMOSTBLACK)の2023年秋冬コレクションが、2023年5月23日(火)に草月会館 イサムノグチ石庭 “天国”にて発表された。
今季のオールモストブラックは、芸術家の勅使河原蒼風とコラボレーション。いけばな草月流の創始者であり、数々の斬新な表現を生み出したことから「花のピカソ」の異名を持つ勅使河原蒼風。いけばなだけでなく、樹塊を用いた巨大な木彫や花を用いない立体作品、コラージュ絵画など、多様な作品を手掛けており、サルバドール・ダリやジョアン・ミロ、イサム・ノグチら巨匠とも交流を持った人物だ。
今シーズンは、そんな蒼風の表現をデザイナーの中嶋峻太が解釈し、再講釈。コレクションの随所に蒼風の息吹を感じられるディテールが散りばめられた。たとえば、ミリタリーパンツやシャツに施された紐。これは機能面を支える紐を何重にも絡ませることで、蔦が絡み合った様子を表したものだ。
ブランドの象徴的なミリタリーアイテムに、いけばなのエレガンスを掛け合わせるという手法もまた今季の鍵と言えよう。
もうひとつ特筆すべきは、ほぼすべてのウェアに開けられた穴について。これらの穴は、蒼風が花器や立体作品、樹塊、冷たさを感じる鉄の作品などに開けた不気味な穴から着想を得たものである。中嶋はこの穴を、パンク・ファッションを強調する要素と位置付けた。ファーストルックのロングコートからラストルックのほつれた糸が印象的なコートまで、繰り返し施されている。
また、“穴”はステンレスのボタンやブローチといった装飾にも採用。ステンレス鋳物の工場である「ヤナギモト」の協力の下制作された。ボタンやブローチの特徴的な形状、そこに開けられた穴もすべて蒼風の作品が着想源だ。
ほかにも、蒼風作品からのヒントは至る所に隠されている。エッフェル塔を描いた蒼風による作品《Efferu-To》は、ニットや白シャツに大きくプリントされ、インパクトを与えた。