アンリアレイジ(ANREALAGE)の2014‐15年秋冬コレクションが、2014年3月28日(金)にラフォーレミュージアム六本木にて発表された。
ショーが始まると、タイルのようなランウェイが鮮やかなグリーンにライトアップされ、天井からは雪が舞う。今季のテーマは「SEASON」。
「ファッションのシーズンは春夏と秋冬に分かれているけれど、その境目は非常に曖昧」とデザイナーの森永邦彦が語る通り、春なのに雪が降っていたり、夏なのに暑くなかったりと、異常気象で最近の季節感は前よりも明確ではない。今シーズンは、そんな曖昧な季節にも対応できる新素材を使用した服を披露する。
温度調節素材「アウトラスト」は、ほぼすべてのアイテムに使用された。この素材にはマイクロカプセルがあり、寒い日は貯蓄していた熱を放出し、熱い日は余分な熱を吸収することで、常に衣服内の温度を32℃にコントロールすることができる。
また私たちが季節に大きく左右される“体温”もキー。パレットは、サーモグラフィーで体温を見たときのような寒色系、暖色系が用いられ、鮮やかにランウェイを彩る。前半は氷をイメージしたスタッズをあしらったブルーのコートやショートジャケット、ケーブルのトロンプイユのスカートやトップスなどが登場。その後は目の覚めるようなイエロー、オレンジ、レッドが展開されていく。すべての服のタグ部分には、取り外し可能な紙の温度計がついている。またモデル一人一人の顔につけた、気泡のような粒があしわれたオブジェは、加茂克也が手掛けたもので、こちらもサーモグラフィーを見たときの粒子をイメージしているという。
素材だけでなく、ファーに小さな穴をいくつもあけたコートなど、冬らしい暖かな生地を、夏らしいメッシュのように仕上げるなど、複雑に入り混じる季節感はディテールにも表れている。足元のヒールは氷のようなクリアな素材が用いられているが、夏に溶けてしまったような形になっていたりと、今季のアイディアは靴一つとってもしっかりとアピールされている。
ラストは、切り込みの入ったレッドのファーコートを着たモデルが登場し、ランウェイ中央に立ち止る。照明が天井から降りてくると、切りこみはゆっくりと広がりはじめ、やがて穴のよう開いていく。形状記憶のワイヤーが入ったコートは温度が上がることで、形を変えるという仕掛けが隠されていた。今季は、ショーでサプライズを提供する姿勢や、ユニークな発想はそのままに、“快適さ”に着目し、身に纏う人と服との関係を縮めていた。