ミュベール(MUVEIL)の2024年春夏コレクションを紹介。
ミュベールが今季のクリエイションに向けて想いを馳せたのは、アイルランドに伝わる妖精“セルキー”。海の中ではアザラシの毛皮を被って生活し、陸では毛皮を脱いで人間の姿になると言われている。
そして、毛皮を脱いだセルキーの美しさに魅了された男が、海に戻れぬよう毛皮を隠して結婚し家庭を築くも、彼らに生まれた子供が毛皮を見つけたことでセルキーが再び海へと戻っていく伝説は、今もなお、文学や芸術の題材として愛されている。今季は、そんな妖精を出発点に、美しい海の世界をワードローブに落とし込んで行く。
まず最初に目に飛び込んでくるのは、まるで地上の花のようにカラフルで個性豊かなイソギンチャクやサンゴをモチーフにしたディテール。ワンピースに施されたフラワーモチーフは、複数のパーツを所々重ねながら縫い付けることで、海の中でふわふわと揺れるイソギンチャクやサンゴのような動きを演出した。
クジラやヒトデが登場するオリジナルプリントも、ファンタジックな物語を盛り上げていくのに欠かせないもの。あえて生地に異なる方向のプリーツ加工を施すことで、水面のたおやかな動きを立体的に表現しているのも面白い。
毎シーズン、心ときめく動物モチーフで魅了するミュベールが、今季の主役に選んだのはつぶらな瞳が愛らしいアザラシだ。ツヤツヤした質感から小さな手に至るまで丁寧に再現されたアザラシのモチーフがカーディガンやチェーンバッグなどに登場する。彼らのお腹やヒレに施されたスパンコールの装飾は、水しぶきを思わせる涼し気なアクセントになっている。
カラーは、ターコイズやサックスブルー、ネイビーなど、光の反射によって変化する海のように様々なブルーを基調に。そこにピンクやイエローを差し込んで、驚きに満ちた神秘的な海の物語を軽やかに彩った。