ミュベール(MUVEIL)の2024年プレフォールコレクションが発表された。
幼少期から天才子役と呼ばれ、実績を積みながら「二四の瞳」等300本以上の映画に出演した、昭和を代表する女優でもありエッセイストとしても高い評価を得た高峰秀子。ユーモアも兼ね備え、実直で気取らない性格は、キッチンのたわしや灰皿、骨董品など、好きなものを長く手入れし愛用していたという点からも感じ取ることができる。
そんな高峰秀子を着想源とした今シーズンは、高峰所以の物や事象をモチーフとしたコレクションとなる。オーダーメイドが根付いていた昭和時代のパターンを参考に、高峰秀子のプライベートなシーンをコレクションに投影していく。
まずはじめに注目したいのは、高峰の自宅インテリアを参考に制作したというオリジナルレースのワンピース。テーブルクロスに描かれているような花のカットワークレースが印象的だ。ウエスト部分で生地が切り替わっており、上部はボヘミアンシャツのようなドロップショルダーで、ふんわりとした袖に仕上げている。
スタンドネックのクラシカルなワンピースには、ハートモチーフで遊び心を添えて。ハート柄の刺繍をラインステッチのように全面に施したデザインは、さながら昭和時代のオーダーメイドの衣服のようだ。ウエストラインには、ペプラムのように大きめのフリルを配した。
ネグリジェやガウンを好んだ高峰。今回、ネグリジェを日常的に着用できるようカットソーやニットとドッキングしたウェアを提案している。相反する要素でありながら、どこか調和のとれた上品なワンピースに仕上がっている。
もともと犬好きであったという高峰は、晩年のある雨の日に猫を拾い、愛猫家に。スウェットにはふわふわの起毛で、ニットカーディガンにはクロスステッチ刺繡で高峰が飼っていた2匹の猫をあしらった。ビーズで表現した瞳はつぶらで、なんとも言えない愛らしい表情に心を射抜かれてしまいそうだ。