ヴァレンティノ(VALENTINO)の2024年春夏ウィメンズコレクションが発表された。
今季のヴァレンティノが焦点を合わせたのが、「身体」であったという。もちろん、衣服とは身にまとうものである以上、身体と密接な関係を取り結ぶことは言うまでもない。しかし、というよりもだからこそ、衣服の造形を織りなそうとするとき、その自然な起点として身体が立ち現れてゆくことになる。
今季のコレクションの特徴のひとつが、素肌の強調だろう。スカートを短い丈感にまとめるばかりでなく、ドレスはシンプルなフォルムを基調としつつ大胆なカットアウトを施し、あるいは葉や花々、鳥など、華やかなバロック調のモチーフを浮き彫り状にあらわし、大胆な透かし模様に仕上げている。
衣服を織りなすファブリックからは、こうして素肌が垣間見られることになる。ここで、身体の官能性が再考される。衣服はエロティックな裸形を覆い隠すというよりむしろ、衣服が身体を包み込むからこそ、身体の官能性が事後的に立ち現れるのだ。ドレスのダイナミックな揺らめきや装飾的な透かし模様は、なるほど華やぐ一方、そこでは身体と衣服の関係があらためて追求されている。
もう1点、透かし模様に付け加えるならば、これは装飾と構造の関係にも光を投げかけている。通常は絵画の額縁なり建築の外装、内装なり、そしてむろん衣服のディテールなり、要はある構造の装飾として用いられるであろうバロック調のモチーフは、むしろ、ドレスやガウンといった衣服の構造それ自体を織りなす要素となっているのだ。
あらためて身体と衣服の関係に戻ろう。ここでは、構築的なドレスが身体から自律したフォルムを形成するというのではなく、柔らかく身体に寄り添うカジュアルな装いが強調されている。着込むほどに身体に馴染むであろう、デニムを用いたジャケットやパンツはその一例だ。あるいはテーラリングにおいても、そのソリッドな性格とは対照的に、コットンポプリンを素材に用いることで、軽快な佇まいへと転換している。