イッセイ ミヤケ メン(ISSEI MIYAKE MEN)の2016年春夏コレクションは、都市の中の自然に焦点を当てている。フォトプリントのアイテムは、東京を拠点に活動する若手写真家、水谷吉法とのコラボレーションによるもので、今回のコレクションの鍵となる重要な役割を果たしている。
ファーストルックのコートは、水谷が撮影した東京に生息する野生のインコの写真をコットンポリエステルのジャカードで表現したもの。日本の職人技術を駆使した1着で、写真と見紛うような精巧さには驚くほかない。1-12ルックまでは“トーキョー・インコ"の品評会のようで、大小様々なインコがジャケット、シャツ、ショートパンツの上を飛び交っている。杢調のツイードジャケットやニットは、写真をプリントした不織布でスリット糸を作り、その糸を織り込んだものだ。
中盤に入ると、メキシコの偉大なる建築家、ルイス・バラガンの作品にインスパイアされたルックに切り替わる。ウエストをブルーのベルトでマークしたベージュのジャケットと、くすんだピンクのショートパンツの組み合わせは、バラガンの自邸から色を拾ったものだろう。玉虫色のように光るパープルのジャンプスーツは、80年代のイッセイを連想させるゆったり布をまとうようなシルエットだ。カラーパレットは、強い太陽の光で乾いたような色合いのライトブルー、イエロー、ピンクなどで、アイテムを壁に見立ててバラガンの建築のように色を対比させている。
後半は、水谷の写真集「COLORS」の作品をインクジェットプリントした素材を、高橋の持ち味であるストリート風に調理している。現代アートのような鋭角な線のプリント柄を、ビッグTシャツ、ショートパンツ、スカーフの3点セットで着こなすのが代表的なスタイル。足元はもちろんスニーカーを合わせている。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)