Y-3(ワイスリー)は2016年春夏コレクションをフランス・パリで発表した。①シアー(透ける)②フルイド(流れるように滑らか)③ウルトラライト(超軽量)――の3つをキーワードに “運動する人体の動き”に焦点を当て、モードとスポーツの融合をこれまで以上に追求。と同時に、アディダスの象徴である3本線(スリーストライプス)への回帰を強め、新旧両方のファンが満足できそうな充実したコレクションになっている。
最初に登場したのは、中国・重慶出身のタオ・イェが芸術監督を務めるタオ・ダンスシアターの面々。体に沿った黒のタートルネックと袴のようなスカートの黒1色の衣装に身を包み、中国武術とコンテンポラリーダンスを組み合わせたような迫力のある動きを披露する。そのダンスのキレは驚異的だが、それに負けじと衣装はあたかも体の一部であるように動きに追随する。つかみはOKだ。
袖まくりしたジャケット&タンクトップ、ガウチョ風のパンツ、ミドルカットのスニーカーの黒尽くめのシンプルなルックで、ショーはスタート。テクニカルニット素材のブーティにレザーパネルが配置されたスニーカーは「KYUJO」という新モデルだ。ショーは男女が交互に行き来する構成で、ウィメンズのファーストルックは、縦にジッパーを配したコクーンシルエットのワンピースに、片方の肩がスリーストライプスになったタンクトップを合わせている。
中盤に入ると、スリーストライプスがその存在を声高に主張しはじめる。ブラックのボディにロイヤルブルーの3本線が入ったジャージーパンツ、ウィメンズのスカートの斜めの線など、80年代のRun-D.M.C.的なクラシックな取り入れ方から、3本線が発展したボーダーの表現まで、その見せ方は多種多様。進化したスリーストライプスを存分に堪能できる。
また、ビッグサイズのTシャツやタンクトップにプリントされたイラストも印象的。4点の自画像は、山本耀司が即興で描いたスケッチなのだという。ショーの後半で見せた、流れる煙に色を付けたようなグラフィカルなプリントも魅力的。それらをパーカーやロング丈のカットソー、そして今回のキーアイテムのポンチョなどに落とし込んでいる。
カラーパレットは、ブラック&ホワイトをベースカラーに、鮮やかなブルー、レッドを挿している。シンプルな構成だが、そこは黒の魔術師。終盤まで飽きさせずに一気に見せるのは流石の一言だ。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)