トーキングアバウト ジ アブストラクション(TALKING ABOUT THE ABSTRACTION)が2016年春夏コレクションを発表。今季のテーマはInitial Impulse(初期衝動)。目には見えない何かに突き動かされ、無自覚のうちに何かを追いかける強い行動欲求を指す。デザイナー・市原直紀が若いころ感じた、自身の初期衝動「デニム」「音楽」「友達」をリアルなものとして創りあげた。
今季のアイコンとなったのは、チャールズ・ピーターソン(Charles Peterson)。1980年代後半より、サブ ポップ レコード(Sub Pop Records)の非公式カメラマンとして、当時まだ無名だったニルバーナ(NIRVANA)やパール・ジャム(Pearl Jam)などを撮影。シアトルのアンダーグラウンドシーンを記録した人物だ。
彼を描写したアイテムは、トップス、パーカ、バッグと様々。特に、ジャカードニットのトップスは、ブランドが得意とするグラフィック技術で立体感ある仕上がりに。染色性の異なる数種類の糸の使用したり、編みに強弱をつけたりすることで、色にメリハリを出している。ニュートラルカラーで彩られた躍動感あふれるアイテムからは、バンドの織りなすヘビーなリズム、ノイジーな音も視覚イメージとしてとらえることができる。
また、そのほかにもプリント技術を多用したアイテムが。秀逸なのは、デニムのトロンプルイユ。履いた時に入る皺や、時間が経つと現れる色の落ち感などを、柔らかいスウェット素材に忠実に再現している。また、ロールアップができるように裾の裏地だけをデニム仕様にしているのも面白い。
もちろんプリントだけではない。今季はパッチワークでの演出も特徴的だ。わざと色褪せさせた生地を繋ぎ合わせたTシャツやハーフパンツ、少しだけトラッドな刺繍を切入れたキューバシャツなどで、グランジの要素を織り交ぜた。これらすべてのエレメンツが、コレクション全体の完成度を高めている。