ジェニー ファックス(Jenny Fax)は、ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)と合同で、2016年春夏コレクションを2015年10月17日(土)に発表した。会場は、ラフォーレミュージアム原宿。
「この街に この家に こころは 帰る 家に帰れば 積○ハウス~」、きっと誰もが耳にしたことのあるこのCMソングからショーはスタートした。真っ暗な会場に細く光が灯り、動く小さな家(の模型)を照らし出す。天井までのぼりきると、ダンサーが現れた。紫のドレスを着た4人組はランウェイ脇で弾むように踊り、ランジェリー姿のセクシーダンサーは厭らしげに舞う。もちろんランウェイ上には、新作ルックに身を包んだモデルが登場しているのだが、80年代に流行した「キャベツ人形」のミニショーも行われている。
違うストーリーが同時に進む、この支離滅裂とも思える演出は、シュエ・ジェンファンの頭の中を映し出したものだという。初めにテーマを設定してから、コレクション製作をするシュエは、その過程で生まれた当初のアイデアとずれたものを抱えたまま、これまでコレクションを発表してきたという。今季は、その過程に出てきたものすべてを発表することを選んだそうだ。
コレクションのテーマは「呪い」。確かに、モデルの頭には、ナイフのように櫛が刺さっているし、鋭利で長い爪や切りっぱなしでだらりと伸びた裾など、狂気じみた要素はいくつかある。しかし、シュエならではのドリーミーなエッセンスがそこらかしこに散らばっているのも事実だ。ホワイトとライトブルーの水玉模様、ふっくらと膨らんだ袖、パステルカラーの刺繍といった、可愛らしさを構成するエレメントがマキシドレスやミニワンピースを彩っている。
また、少女ならではの危うさや、思春期に見られる反抗心といった複雑なものは、アンダーウェアをミックスしたルックで表現。網タイツにレースパンツ、太ベルトのようなミニスカートを合わせて。ナイトウェアのようなロングワンピースや中綿入りのロングコートも、色褪せたようなカラーリングで、真っ正面な可愛さではなく、どこか狂いがある。
個性的でパンチの効いたウェアばかりだが、これを作っているシュエは口数少なく、穏やか。テーマの「呪い」は強い言葉だが、何かに夢中で取り組んでいる人は「呪」われているようにも見えると話した。それに、洋服づくりを続ける自分もその一人だとも、ショーの口火を切ったあのメロディーは、平和を好む日本人の宗教的な要素を示しているとも。