マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)の2016-17年秋冬コレクションは、マーク BY マーク ジェイコブス(MARC BY MARC JACOBS)が統合されてから2度目のシーズン。前シーズンとは背反するダークなムードが漂う。
広い会場を闊歩するモデルたちの気高い風貌は、中世ヨーロッパの貴族たちのよう。メイクも、当時貴婦人たちの間で大流行した白塗りを連想させる不気味なものである。ランウェイには、レディー・ガガの姿もあった。彼女の強いまなざしから感じるこの上ない迫力。威厳ある貴族たちの服装を現代風に再解釈した、袖にボリュームを持たせたアウターと靴底の高いシューズを纏っていた。そこに合わせられた、リュクスなファー、レザーのハンドバッグは、洋服をモダンに昇華するための重要なエレメンツ。これらの存在意義は、全体を通して今季の特徴ともいえる。
何かのフィルターを通してみているようなグレイッシュなカラーは、終始変わらぬまま。テキスタイルは、チェス盤のような市松模様、繊細なチュール、ネコや躍るバレリーナのプリントなどを幅広くハイブリットさせた。黒鳥の羽やスパンコールもあしらって、すべてを構築的に組み合わせたワードローブは、通常の何倍にも膨張して存在感を放つ。手先を覆い隠す長い袖のプルオーバー、煌めく刺繍やゴシック柄で彩られた巨大なジャケットやコート、大胆な主張はとどまることを知らない。
かつての男性たちが愛した服装も模範とされていたのだろう。彼らの正装に必需品であった、ネクタイの原型ともいわれるクラヴァットのようなリボンは胸元で大きく結ばれた。当時と違うのは、ボウタイブラウスやワンピースに光沢ある素材と繊細なレースを用い、女性らしさを加えてアレンジしていること。ラペルに贅沢なファーを配したコートなどを、アウターとしてマッチさせていることも要因のひとつ。
終盤に現れたドレスルックは、これまでにみたビックシルエット、男性的な側面、デニムやスウェットを用いたカジュアルな要素を、一切廃して美しさを際立たせた。ファブリックには、流れるようなグリッター、木の葉脈のような柄、羽ばたく鳥のエンブロイダリーを施すことで、ナチュラルな風を吹かせていた。あらゆるものを掛け合わせた、ラグジュアリーで品格あるスタイル。それはまるで“女王”のように…。