ジル・サンダー(JIL SANDER)の2016-17年秋冬ウィメンズコレクションが、2016年2月27日(土)に発表された。キーワードは「ノクタール(暗闇の中で)」。
コレクションノートに書かれた「プロポーションは極端」というワード。まさに、その言葉が生きたシーズンである。身体のラインに添わせること、ふわりと広げること。そういった観念からは遠ざかった独自のフォルムは、布地とボディの間に一定の距離があり、肩や腕周りは大きく、大胆なボリュームをはらんでいる。
一方で、テーラードジャケットやダブルのコート、パンツスーツといった、マスキュリンを基軸としたアイテムたちは、違う動きを見せる。前からみると、前述の肩章付きロングコートや膝下丈のチェスターコートと並び、同様の重量感。しかし、後ろではギャザーを寄せてリボンを結び、女性らしい曲線を創り出している。
パッと目に着くような装飾性はないものの、陰影による表情の引き出し方がうまい。アシンメトリーなベアドレスでは、肩から腕、そして胴体全体にかけて細かなシワを寄せ、ロングコートはボタンラインに添ってキュッとつまんだような折り返しを施している。また、ポケットも少しだけ斜めに、左右対称に配置して、ユーモアを。ブラックやホワイトなど、1色のベーシックカラーで1ルックを完成させているからこそ、成せる表現方法がそこにある。
後半にかけては、テクスチャーにも変化が。ガラス加工を施したレザー、ホイルプリントをしたシルク、気ままに舞うモヘアなどがいい例だ。一方で、シルバーもキーカラーとなり、見る角度によってピンク色に変わるプレーンなワンピースや、スクラッチのような刺繍を施したキャミドレスなどを差し込み、刺激と無機質さを際立たせている。