ジュンヤ ワタナベ(JUNYA WATANABE)は、2025-26年秋冬ウィメンズコレクションをフランス・パリで発表した。
デザイナーの渡辺淳弥が注目しているのは、"非現実的な服作り”。オブジェのごとく存在感を放つ立体的で幾何学的なフォルムは、ジュンヤ ワタナベ 2024年春夏コレクションや、2024-25年秋冬ウィメンズコレクションでも顕著だった傾向だが、今季の特徴的な点は、いずれもベースとなっているのが「身近な服」であるということだ。
レザーのライダースジャケットにはじまり、トレンチコート、テーラードジャケット、チェスターコート、フライトジャケット、ベルベットのドレスなどのベーシックなウェアを原型に、「キュビスム」の視点から捉え直す試みがクリエーションの軸になっている。幾何学的な形により絵画を構成する「キュビスム」の考え方を投影することで、「リアルクローゼット」のリアルさや、「身近な服」の「服らしさ」を否定していくことで生まれる「非リアルな服」が提示されている。
ライダースジャケットからは角ばった柱が何本もそびえたり、アシンメトリーに拡張されたレザーパーツが大きく歪んでいたり。また、レザーのレースアップブーツを袖にドッキングしたデザインや、後ろ身頃が壁のようにせり上がったジャケットも登場した。
さらに、箱が前後左右にあしらわれたレザートップスや、三角形の骨組みが幾重にも連なるトレンチコート、鋭利な棘のようなパーツが一体化したテーラードジャケットなど、大きく変形させたピースが続く。
フライトジャケットはパフィーなボリュームを持たせることで極端な造形に仕上げており、全体が肩を覆うクッションのようになっているブルゾンや、裾に向かって重心のあるフライトジャケットのフォルムを誇張したアウターが目を引いた。
コレクションのラストを飾ったのは、複数のパネルを組み合わせることで全体を構成したコートやジャケット。艶やかなパテントレザーやマットなパーツをパズルのごとくグラフィカルに組み合わせていき、立体的な服を構成している。幾何学的に平面化された形によって絵画の画面を構成する、「キュビスム」の手法を忠実に反映したデザインであるといえるだろう。