ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)の2023年春夏ウィメンズコレクションを紹介。
2020年以来、2年半ぶりにショー形式で発表されたドリス ヴァン ノッテンの2023年春夏ウィメンズコレクション。色彩や質感、造形のコントラストを通して、闇から光へと向かっていく瞬間のような、移ろいゆく感覚を表現。性質の異なる要素が作用しあうことで生まれる躍動、服をまとうというフィジカルな感覚の“親密さ”や“喜び”が、コレクションを通じて描き出されている。
今季のコレクションは、主に3つの要素で構成されている。まず1つ目は、深いブラック1色で作られたピースだ。所々布地をつまんだようなフォルムのオーバーサイズジャケットをはじめ、ウエストをシェイプしたテーラードジャケットやドレスなどが登場。ブラックの持つ抽象性によって、彫刻的なフォルムがより一層際立っている。
また、ドレスの肩やジャケットの裾から伸びる極端に長いフリンジ、うねるようなフォルムを描くフリルやプリーツなど、動きを持たせるディテールも目を引いた。ボタンやブローチ、ネックレスとしてブラックのルックを装飾する有機的な真鍮パーツは、その落ち着いた輝きによって、デザインに静かなリズムの変化をもたらしている。
2つ目の要素を担うのは、グリーンやライラック、レモンイエロー、ピンクなど淡く落ち着いた色味のパステルカラー。ディテールの大胆さが、軽やかな色彩によって研ぎ澄まされた印象になっている。例えば、断ち切りの部分を残したパッチワークスカートや、ダイナミックな切り替えを施したアシンメトリーのカラーブロックドレス、シワ加工を全面に施したコートなど、粗さや大胆さのある装飾は、すっと自然にその佇まいの中に溶け込んでいる。
フレッシュなピンクのブラウスに組み合わせたクロシェ編みトップスや、ランダムな動きを付けたフリルのドレス、クラッシュドプリーツの装飾を施したブラウスなど、クラフトの手触りを感じさせるピースも印象的だ。
コレクションのラストを飾る3つ目の要素は、鮮やかなフラワープリント。ドリス ヴァン ノッテンが長きにわたって展開してきた花のデザインを再考し、拡大/縮小したり、異なる花々のプリントを組み合わせたりすることで、生き生きとした花の表現を生み出している。
透け感のある柔らかなフラワープリントのパンツにはあえてヴィヴィッドなブルーの花柄ジャケットを組み合わせ、鮮烈なピンクの花々が彩るシャツワンピースには、マクラメ編みのトップスを重ねることで動きのある佇まいに。また、華やかなドレスには、布地を幾重にも重ねたり、不均一にギャザーを寄せたり、ドレープを作り出したりすることで、エネルギッシュな躍動感をプラス。エレガントさとともに、楽天的なムードを生み出していた。
Photo Credit : Imaxtree