バレンシアガ(BALENCIAGA)が、2016-17年秋冬コレクションを発表した。デムナ・ヴァザリアがアーティスティック・ディレクターに就任した、注目の初シーズンだ。
序盤に登場したのは、体の線を構築的に強調するテーラードジャケット。少し前に出た肩のラインから始まり、腰からヒップにわたる極端な凹凸は、ミニマムなワードローブに動きをもたらす役割を果たしている。そして、ダウンコートやパーカ、ブルゾンといったスポーティーなアイテムは、大胆に襟足を立ててデコルテを大きく見せる、ブランドのシグネチャーであるオペラコートからインスパイアされた形に。続くトレンチコートやデニムのジャケットも同様。すべて肩を抜いた深いV字を築き、新たな美の表現を紡ぎ出した。
コーディネートされたスカートは、生地を折りたたんだデザインのタイトなものから、パニエを重ねたように膨らんだボリュームのあるものまで多種多様。しかし、何れとして構築的なフォルムが共通している。
終盤に披露したのは、フラワープリントなど様々な柄を組み合わせたドレスルック。無論、今まで提案された建築的要素は押さえている。そこに新たに投じたのは、柔らかに揺れるドレープ。レイヤードされた幾つものテキスタイルが、大小さまざまに散りばめられたフラワーに生命を宿し、一層ランウェイを華やかにした。
全てのアイテムが見慣れたもののはずなのに、デムナ・ヴァザリアの手法によって、全てがアートピースさながらの芸術性の高さを誇る。それは、クリストバル・バレンシアガが打ち出したユーモアに溢れたミニマリズムに匹敵する何かがあるのではと憶測させる。彼が手掛けた今季のコレクションは、大胆でありながらもメゾンの歴史を継承する気高さを感じさせ、堂々たる風格に満ちていた。