トリコ・コム デ ギャルソン(trict COMME des GARÇONS)の2016-17年秋冬コレクションが発表。
優しいフォークロア。このテーマを掲げた今シーズンは、穏やかな風と神秘的なベールを纏うようなワードローブが並んだ。
まず最初は、モノトーンをベースに。丸いフォルムのワンピースはふんわり揺れて、ギャザーによってさらなる表情を出している。スカートやセットアップに用いられた格子柄、波模様のリボンテープやボタンの代わりにあしらったエンブロイダリーなどが、民族っぽさをほのめかす。
中盤になるにつれ、今まで提案されていた黒と白が、次第に刺繍やプリーツを施したオーガンザで覆われていく。その薄く繊細な素材を活かした、ラップスカートやスモックブラウスのような形からもフォークロアなエッセンスが感じられるだろう。色彩はなくとも、精巧に創り上げられることで生まれた温かみあるそのルックは、次に登場する赤という色彩への序章。
赤を用いたルックの中で印象的だったのは、アンティーク調のスカート。肉厚なタータンチェックの上にのせた、ベルベットの刺繍による草花模様が特徴だ。トップスにはフリルを重ねた真っ白なブラウスを合わせて、ガーリーなスタイルに仕上げた。
気付けば草花の模様は、より自由に入り乱れていた。ほっこりとしたチロリアン風の刺繍は、何か規則性をもつかのごとく配された。スカーフのようなテキスタイルは、時々裏と表を逆にしながらワンピースやスカート、そしてブラウスに表現。花々の主張が増長することで、神秘的なフォークロアへ導かれていく。それはロマンティックで大胆。しかし、いずれにせよ優しいベールは消えない。
胸元に咲くバラは、綿にオーガンザをボンディングした生地を幾枚も重ねたり、くるくると丸めて象ったりした、様々な手法によるもの。それを、硬質なテクスチャーのラッセルレースや小さなドットのチュール、柔らかなニットに装飾している。ボトムスには、アコーディオンプリーツ、あるいはしわ加工のスカートを合わせているが、どれをとっても、揺れると花がまるで踊るように見える秀逸さ。定番のティアードやフレアのスカートも、チュールをレイヤードした儚げなものへと変貌を遂げた。