2011年10月29日、jazzkatze(ジャズカッツェ)が2012年春夏コレクションを発表した。テーマは「マリアカラスが見た月」。毎晩彼女がオペラを聴きながら見た月や、カラスが月を見る姿をイメージしたという。そして、コレクションのタイトルは「shoot the moon」、過ぎ去った恋への捨てきれない想いを描いた、ノラ・ジョーンズの心に響く名曲だ。
春夏らしい淡いパステルトーンが作り出すフェミニンな雰囲気と、シックなブラックや夕焼けのようなオレンジが見せる強いコントラストが、甘いだけではないクールなフェミニンスタイルを作り出している。マリアは気の強い感情的な女性だったが、愛人だったオナシスと一緒にいると女性らしく優しい表情を見せた。そんな彼女の表情や、愛したオナシスを失った悲しみをこのカラーパレットで表現したとデザイナーの周布歩美氏は語る。そしてメインカラーの乳白色は追憶の色。柔らかだがマットな質感の素材を使ったのは、強さも表現したかったからという。
水色のプリントは月の光にきらめく水のゆらめきを写し、闇夜に浮かび上がる白い月の水玉模様が儚い恋の余韻を残している。幻想的なフラワープリントやさりげなく透ける生地の重なりは、繊細な乙女心を描き出した。 美に対する執着心から、体の中でサナダムシを飼っていたと言われているマリア。今回デザインのポイントとして施されたフリルは、そのサナダムシが肌からさらさらと流れ出てくる様子をイメージ。彼女の切ないまでもの感情が、美しいフリルとなって昇華されているのが印象的だ。
「絶対的な愛という優しさを伝えたかったと語るデザイナーならではの細やかな感性が光るデザインで表現された、自分らしさを大切にする女性達へ贈るコレクションだった。