3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim) の2012年春夏メンズコレクション。不良の巣窟と化し、誰からも見捨てられ荒れきった西海岸のビーチ・通称'Dog Town'。70年代後半、この地に居場所を求めて集まった若者達がストリートにおけるセンスとスタイルに磨きをかけ、今のユースカルチャーの基礎を作っていった。その中でも全米に衝撃を与えたのは、革新的なスタイルでスケーターカルチャーに新時代を築いたz-boysと呼ばれる少年達。今回のコレクションはそんな彼らのフレッシュな勢いに、モダンなテーラーリングをプラスしている。
カラーパレットは、レモンイエロー、ホワイト、モスグリーン、アクアブルーといった淡い色彩に、コバルトブルー、黄味がかった褐色、ブラック、ネイビーでクールなアクセントを加えた。強いカラーコントラストでグラデーションを描いたデニムやシャツは、若者達のイメージをそのまま落とし込んだかのようだ。ピンタックやチンツシルク、ダメージニット、アシッドウォッシュなどの生地も軽快なビジュアルを演出。風になびくかのようなオーバーサイズのリラックス感あるシルエットにはどこかエレガントな雰囲気が漂っている。また、ジッパーがポイントのパンツや光沢のあるシューズなどが遊び心も感じさせる。
z-boysの中心的人物の一人、クレッグ・ステシックは言う。「スケーターとは、都会のゲリラそのものである。すでに意味を持たなくなってしまった人工物や、企業・政府などの建築物を、その創設者が思いもしなかったような方法で、彼らは独自のブレインを使って自分たちの日常に取り込み、毎日を遊びまくることができるのだ」(Craig Stecyck 1976, Dog Town - The Legend Of The Z Boys.)。
既存のものを自由にミックスして新たな「スタイル」を生みだした彼らの爽やかなまでに柔軟な姿勢と、「若さ」というエネルギーで当たり前のように世界を変えてしまうその力強さ、そしてふとした瞬間に垣間見える少年たちの純朴さが表現されたコレクションは、エフォートレスで若々しいエレガンスに溢れている。