サンローラン(Saint Laurent)は、2019年春夏メンズコレクションをニューヨークで2018年6月6日(水)に発表した。
会場は、ニューヨーク湾とハドソン川に面したリバティー州立公園。スカイラインの夜景を望むロマンチックな空間でお披露目となったランウェイは、クリエイティブ・ディレクター アンソニー・ヴァカレロのデザインによる初のメンズ単独ショーだ。(女性モデルも登場しているが、着用しているのはメンズウェア)
まるで夜景の光を味方にするようなブラックとゴールドのルックで彩った序盤、トップは短めのジャケット、あるいはシャツをタックイン。ボトムスはハイウエスとでタイト、あるいはパンタロンを想わせるような裾広がりのラインが主流だ。最後まで崩れなかったこのスタイルは、70年代のスピリッツがインスピレーションにあるから。
これを基軸にしてサンローランの世界を構築する中で、今季のショーはニューヨークという自由に満ちた街での開催にふさわしく、すべてが境界線を越えて組み合わせられる。まずは、ブランドが変わらず提案してきたラグジュアリーなアイテム。スカイラインと対話するように煌めくグリッターのジャケット、ラグジュアリーなブラックファーガウン、タイトなスラックスなどがその好例。
そこに新たに混ざり合うエッセンスは、サファリやウエスタンだ。ヒョウ柄はシースルーのシャツに投影され、ウエスタンジレは煌びやかな刺繍に彩られる。デニムやレザー、さらにはシルクなどあらゆる素材で登場するフロントレースアップのトップスも印象的。サファリジャケットは、サンローランらしくタイトなシルエットで新たな解釈を加えている。
アイテムだけでなく、違和感なく採用されている女性モデルたちも、自由を表現するひとつの手法。メンズモデルがシースルーのセンシュアルなシャツで登場したかと思えば、ウィメンズモデルがウエスタン調のシャツで現れる。
ランウェイでのその姿勢は、限りなくジェンダーレスを臨んでいる。性別さえも排除して、アンソニー・ヴァカレロが表現したのは、ニューヨークという自由な街の、その自由を味方にしたファッションの可能性だった。