アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)の2019年春夏ウィメンズコレクションが、フランス・パリで発表された。
テーマは旅。異国や見知らぬ地を訪れるトリップではなく、女性の一生を巡る長き旅路をファッションに落とし込む。この世に命授かり、幼少期を経て少女へ。大人の女性になってからの婚約、結婚というライフステージ。楽しいことばかりではないけれど、様々なドラマが待っている女性の人生を、上質なテキスタイルと緻密なクチュールのテクニックを使ってポエティックに描き出した。
同じマテリアルを使って表現される、女神の姿と紳士の姿。淡いイエローやホワイトのドレスは、少しの力でほどけてしまいそうなほど繊細な生地で仕立てられた。ドラマティックに流れたラッフルは、軽やかさと同時にフェミニニティも象徴する。ミックスさせたのはハードなレザーで、柔らかくなめして仕上げた、波打つような立体ベルトでウエストにポイントをおいた。
切り裂かれたディテール。完成されたものをカットアウトした様は、時に直面してしまう困難を詩的に表現しているようにも見える。優美なロングドレスは、切り裂かれた部分からコルセットが顔を出している。デニム仕上げのジャケットは、裂け目にジップを配して、ブランドらしい強さを感じさせるディテールへと昇華。フレアスカートには、カットアウトのラインに沿ってシルバーパーツをあしらった。
横にふわっと広がったプリンセスドレスは、中世のウエディングドレスをもとに仕上げたもの。中世のウエディングドレスの上に花を置き撮影。その姿をテキスタイルに落とし込みドレスに仕立てた。プリーツの間からレントゲン写真のように映し出されたドレスが見え、中世の美を纏うものに訴えかける。
きっと、中世のプリンスの周りには、動物たちもいただろう。古代の胴部たちは、太陽やストーンなどあらゆるものと混じり合い、職人たちの手刺繍によって命を吹き返す。真っ赤なポピーもまた、職人たちによって一筆一筆手書きで描かれ、甲冑をイメージしたレザージャケットの上で花を咲かせている。