トリコ・コム デ ギャルソン(tricot COMME des GARÇONS)の2019年春夏コレクションはマルチな素材が生む多彩な色柄、そして多彩なパターン構成が生む立体感と身体との空間で魅せる、プレイフルなシーズンだ。そこには紛れもなく乙女心をくすぐる“カワイイ”が詰まっている。
まず、ひとつめの“カワイイ”はシースルーのレイヤード。総レースのレギンスパンツも、まるで雲のようにふわりとしたフォルムのトップスも、共通するのはすべてが透明感のある素材であること。グラフィカルな柄は二重構造になっていて、その様相は錯視を促しているよう。ラメ糸で描く花柄は、中綿を重ねたシフォン素材で、丸みを帯びた花がより一層優しく見える。モノトーンのルックスであっても、奥行きと深みがあるのは、この素材遊びがあまりにも楽しいからだ。
2つめの“カワイイ”は多様性に満ちたアイテム。いずれもパッチワーク状に区切られた今季特有のデザインがもととなっている。パズルのように四角のファブリックを張り合わせて完成したワンピースは、胸元でくるりとねじられたディテールも相まってプリミティブな雰囲気を纏う。さらには、ローズプリントをのせたワイドストライプとマルチカラーのギンガムチェックのプリーツタイプも、縦横無尽に駆け巡るストライプのテキスタイルで構成するティアードタイプもそうだ。スカートひとつをとっても異国情緒あふれる多彩な表情が見られ、その1枚にはクラシックとモダンが往来する。
3つめの“カワイイ”は、レースやフリル、ラッフルのディテール。女性らしい優しい雰囲気を生むフリルは、トップスの縁を囲い、スカートの動きを最大限に引きだす。ギャザーが生む、柔らかな空間はミリタリーなアウターさえも、優しさと女性らしさを象徴する1着へと変えてくれるかのようだ。
巧みなパターンテクニックで生まれたアーキテクチュアルな服を、多彩なレイヤードにパッチワークがプレイフルにし、ディテールがフェミニンにする。こうして生まれワードローブには、年齢問わず愛される“カワイイ”が如何なく反映されている。