ヴァレンティノ(VALENTINO)が2019年プレフォール ファッションショーを東京・品川で2018年11月27日(火)に開催。メゾン初となるメンズ・ウィメンズ合同のプレタポルテコレクション発表には、パフューム(Perfume)、吉岡里帆、EXOのレイなどアジアのセレブが多く駆け付けた。
「未完成、絶え間ない変化、という日本の美しさに対する考え方にいつも魅了されてきました」と、日本のショー開催前に語っていたクリエイティブ ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリ。今回は、こうして彼の心をもつかんだ日本独自の文化とイタリアの文化に敬意を込めたショーでもあるという。
キーワードに掲げたのは、たった一音「間(ま)」という言葉。その中には、バランス、対称、調和が生み出す美しさと、非対称で永遠に続くものなどないというはかなさが生み出す美しさ、2つの考えが存在していている。これらは、出会い、溶け合い、お互いを際立たせ、美の極みを導き出していく。
メンズのワードローブの基軸を担ったのは、リアルなストリートファッションだ。フーディットコートなどの軽やかなアウターとアノラックパーカーやワイドシャツなどのトップス、そしてストレートのスラックスを採用。足元にスニーカー、手元にボディバッグ、ヘッドピースにフェザーが踊るバケットハットで構成していく。スタイリングは、ビッグシルエットのシャツをタックインもせず、ジャケットの下から覗かせ、ヘムを遊ばせているのが印象的だ。
その中で「間」を表現するものとして、ピエールパオロ・ピッチョーリは、プリーツを用いたようだ。センターバックを起点に、ヴァレンティノの“V”を描くように施されていたり、重力に素直に従うように縦に施されていたり。時には、まるで波模様のように、規則性もなく構成されているプリーツもある。白と黒、ブランドの象徴的なカラーである赤という極めてシンプルかつ大胆なカラーパレットのなかで、はっきりではなく、やや朧気に投影されているプリーツは、むしろ感慨深い。
素材の軽やかさはもうひとつのキーワードへと繋がる。それが、日本の“侘び・寂び”の文化だ。今季はアウターも、トップスも、ボトムスも、比較的ライトなテキスタイルを用いた。パターンが立体的であるからこそ、人間の動きと服が緩やかに連動し、身に着けたものの魅力を一層帯びさせる。着る前はまだ未完成で、身体を包み込むことで本来の美しさが見出されていく。静と動が生まれるそこには、絶えず変化するものを美しいとする日本独自の考え、つまりは“侘び・寂び”が恐らく眠っている。
長くブランドを象徴し続けているシンボルもまた、今季のキーワードを含んだ表現で置き換えられた。ストリートという新しい視点が生み出す変化のなか、モンクレール(MONCLER)とのコラボレーションダウンを登場させ、そこにVを楕円で囲んだアーカイブロゴを大きく配置。スニーカーやトップス、バッグなどにもあしらった、限りなく対称的であるこのロゴは、「間」が作り出すアイディアとも、偶然にもリンクしている。