ヴァレンティノ(VALENTINO)の2021年秋冬オートクチュールコレクションが、イタリア・ヴェネツィアの「ガッジャンドレ」で発表された。
ヴァレンティノが「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」期間中に披露したのは、絵画のように鮮烈な色彩を纏ったルックの数々。「ヴァレンティノ デ アトリエ」と題されたプロジェクトでもあった今回のショーでは、身体と深く結びつき“実用の範囲”で表現されるファッションと、制約に縛られない無限の可能性をもつアート、相反する二項の対話を試みた。
絵画とオートクチュールの融合を謳う「ヴァレンティノ デ アトリエ」では、伝統と革新をドレスに落とし込むため、17人のコンテンポラリーアーティストとインスピレーションを分かち合った。
ドレスを鮮烈に彩る美しいカラーには、息をのむようなエメラルドグリーンや深いロイヤルブルー、繊細なパープルが採用され、コレクションを華やかに躍動させている。好きなカラーを自由に組み合わせるかのような、トーンオントーンや反対色の配色によって、エレガントなドレスやパンツスタイルは服としての役割だけではなく“唯一無二の美”を増幅させる。
弾むような色の世界が、アートの長所を表現するものならば、優美なシルエットは服の長所を体現するものだ。無造作なドレープを纏ったコートや長く流麗なロングドレスは身体を覆いつつも自由に揺らめき、アシンメトリーに流れるカッティングも、風を含み洗練されたしなやかさを演出している。
フェザーやフリル、スパンコールなどのディテールは、服とアートの境界線をつなぐ重要な要素。フェザーは時に顔まで覆いつくすほどの帽子になり、またある時には女性のなめらかな身体の曲線美を覆い隠す“筒”のようなスカートとなる。カクテルドレスを飾る大きな花弁のようなフリルも、彫刻的なオールインワンのスパンコールも、絵画とオートクチュールの結びつきを強める手段となっている。
ヴァレンティノのオートクチュールの真骨頂であるドレス群は、絵画的なカラーとロマンティックなシルエットが呼応し、観るもの視線を奪う。繊細なプリーツを蓄えた真っ赤なドレスや、たっぷりとボリューム感のある袖が揺れるカシュクールドレスは、アートならではの造形美をファッションにもたらした今季の象徴としてフィナーレを華々しく飾っている。