2012年10月15日(月)、カミシマチナミ(KAMISHIMA CHINAMI)が2013年春夏コレクションを発表した。テーマは「Butterfly」。「蝶」そのものを直接描くのではなく、花々やその周りに漂う春の暖かな光の印象をモチーフにすることで、人間にとって美しい存在である蝶を間接的に描いている。
今回最も重要となるのが、色使いだ。イエローやグリーン、など鮮やかな色はより鮮やかに、そしてベージュやホワイトなど淡い色はより優しく。それぞれの色が重なり、変化していくさまは、自然に息づく色彩の味わいそのもの。また、日本画からヒントを得たという菖蒲や牡丹、木蓮などの花々が咲き誇るプリントも印象的で、光沢感のあるシルクの柔らかさと相まって、長く待ち望んだ春の訪れに心躍る気持ちにさせてくれる。
象徴的なアイテムは、前後がウェスト部分でセパレートしたボリューム感のあるトレンチコート。裾のラウンドカットとともに、その間から顔を出す大胆なフラワープリントがよりフェミニンさを増している。また、ボックスシルエットのエレガントなワンピースや、Aラインのスカートにはガラス細工のようにも見える樹脂やスパンコールの飾りがきらめき、花びらやみずみずしく反射する光を表現した。一方で、レースアップブーティが甘さを感じさせず、全体をシャープに引き締めるバランス感の良さも見事といえる。
特定のインスピレーション源はなかったというデザイナーのカミシマチナミ。しかしショー後のインタビューで、「日本の中にいて、最近は斜陽な時代性や閉塞感を感じることが多いですね。でも、外から見れば、日本はきっと恵まれている。だから、そういった豊かな日本らしさを自分の軸として表現したかった」と語った。本来、日本が持っているはずの豊かさに目を向けよう、という未来へ向けたポジティブな願いが込められていたコレクション。