TOGA(トーガ)の2020年春夏コレクションを製作する上で、デザイナーの古田泰子は、「生産性を重視しない価値という雰囲気を、生産性重視の元で如何に作りあげるか」ということを念頭に置いた。そして、古田は「もともとファッションという無駄をつくる贅沢、必要としないものを作ることで生まれるものに、もっと時間をかけて、何ができあがるか見てみたかった」とも話す。
古田のその試みを証明する今季のコレクション。キーワードには、「WRAPPING(包む)、REDEVELOPMENT(再構築)、EFFEICIENCY(効率性)」の3つを掲げた。
白いドレスシャツは、襟もととフロント部分の前合わせ部分に、不用意とも思える金具を敷き詰めてみる。ナイトシーンで活躍するはずのドレスには、故意に伸縮性のある機能的ファブリックをプラスした。足し算だけでなく引き算も重要で、ニットは首や胴、腕を通す穴以外に、何の規則性もなく大きな穴がランダムに配置されている。
クラシックなスカーフは今季のキーワードを示す上で重要な役割を担っており、ざっくりとスリットの入ったパンツからは、その隙間をうめるようにスカーフが覗いている。ジャケットやトレンチコートは、通常ならありもしない1枚の布で、包み込まれるようなシルエットを築き、エレガントなドレープを手に入れている。
さらに、まるで“海の不要物”を想わせるようなディテールも特徴的。美しい光沢のあるマニッシュなビジネススーツには、ビニールでできた大きなコサージュを添えてみたり、本来身体を温めるはずのコートには、漁網のようなネットが適応されている。
ファッションデザインは、別の角度から考えれば不要なものの繰り返しかもしれないし、それによって生産効率は悪くなるかもしれない。でも、その生産性の低下は決してデザイナーとして本当に悪いコトかと言われれば、そう一概に頷くこともできない。なぜならそれが、服の“美しさ”を表現する上で欠かせないことでもあるから。
“不必要”と“不可欠”は紙一重にある。そして、ファッションはその“不必要”を楽しむことに魅力がある。そんな風に思わせてくれるのが、今季のTOGAのコレクションだ。