マルニ(MARNI)の2020-21年秋冬メンズコレクションが、2020年1月11日(土)イタリア・ミラノで発表された。
今シーズンは、モデルが次々と登場してキャットウォークを闊歩するランウェイショーとは異なり、パフォーマンス、ダンス、彫刻、建築などジャンルの垣根を越えて活動するアーティストのミケーレ・リッツォとのコラボレーションのもと、新しい演出でコレクションを披露。最新ルックを纏ったモデル兼ダンサーたちがダンスパフォーマンスを行い、前衛的な形式でコレクションが展開された。
キーワードは「未完のハイブリッド」。均衡がとれた“いわゆる”完璧な姿とは一線を画す、どこかアンバランスなピースが主役である。切りつけ、巻き付け、貼り付けなど、豪快であるのに非常に人の手が込んでいる、アイロニカルなピースが揃っている。
冬の季節に活躍してくれそうな肉厚なタートルネックセーターは、右半分は落ち着きのあるカーキであるのに、身体中央を境にして、右半分はフレッシュなライムカラー。ボタンがキレイに整列した真っ赤なVネックカーディガンも、反対側には長さも違う茶色カーディガンになっている。
ヴィンテージ風の趣のあるダークグリーンのレザーコートにいたっては、中央のラインを境にブラウンのクロコダイルコートに。素材だけでなく長さも異なり、完成品は思い切りのよいエキセントリックなのに、その製作過程を想像すると非常に手の込んだ代物であることが伝わってくる。
また、過剰なまでにタイトなものとワイドなものを対比させたルックも散見された。スポーティーなタンクトップは身体にぴたっと張り付くほどコンパクトで、ポロシャツに至ってはへそ上まで裾が上がるほどきゅっとしているのに、コンビネーションさせたスラックスは、腰からずり落ちそうなほどワイドである。
新品であるのに切り傷、色あせ、擦り傷などを“患っている”のもユニーク。チェック柄のロングコートは、肩周りや裾、袖口に焼けたような跡があるし、鮮烈なレッドのワイドパンツも地面に引きずり回されたかのような穴があいていて、一つひとつのピースの中に物語が存在する。
アイコニックに取り入れられたのは、愛の象徴であるハートのモチーフだ。月の満ち欠けのようにハートのマークが消えていく、動きのあるモチーフを全面に配したシャツ&ジャケットや、同心円状にハートマークが広がったタンクトップなどが、シンボリックに登場している。