グッチ(GUCCI)は、2020-21年秋冬メンズコレクションを、2020年1月14日(火)にイタリア・ミラノで発表した。会場には、ロックミュージシャンのMIYAVI、パルクールアスリートのZEN、ミュージシャンのマーク・ロンソンといったセレブリティが来場した。
今季、クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレがテーマに掲げたのは、"男らしさ、その多元性"。本来多様な在り方があるにも関わらず、家父長制やマッチョイズムなど、歴史的に積み上げられてきた一義的な「男らしさ」の理想像を解体する。コレクションを通して、社会的な束縛や、権威主義的な拘束を抜きにした、自由に自己決定ができる男性の姿を提示した。会場の中心には大きな銀の振り子が登場。過去から積み上げられ、今もなお流れている時間を象徴しているかのようだ。
印象的なのは、極端に丈が短いワンピース。例えば、鮮やかなオレンジのワンピースは、レースの襟やギャザー、切り替えごとに配されたレースの装飾など、フェミニンな要素をギュッと凝縮したような1着だ。その他にも、小花模様の生地で仕立てたバルーンスリーブのワンピースや、スクエアカラーのタータンチェックのブラウス、ハイウエストで切り替えたベルベットのミニワンピースなども展開された。
また、ひよこのアップリケをあしらったギンガムチェックのチュニックや、生まれたてのひよこをモチーフにしたコンパクトなニット、クッキー缶のようなバッグなど、フェミニティだけでなく幼さ、あどけなさも感じさせるピースも散見された。
フェミニンであどけないこうしたウェアの数々は、通念上はいわゆる「男らしさ」とはかけ離れた印象のアイテムに位置するだろう。しかし、男性がありのままの姿で、フェミニンかつ幼い服を身に着けることは、自由な意思決定がある限り“男らしいこと”と相反しないはずだ。アイテムを構築する多様な要素は、何者にもなれる自由な可能性を示唆している。
褪せたような色合いのニットやピリング、ほつれ、ダメージ加工など、ヴィンテージ感溢れる質感にも注目。穴の開いたモスグリーンのニットの裾から中に着たシャツが見え、ボトムスに合わせたジーンズは、膝に穴が開いている。襟がほつれ、くたっとしたシワのあるベルベットのジャケット、少し歪な形のモチーフを配したピンクのニットなどは、どこかしらにほころびが見える。
モデルの着こなし方も、襟が一部ニットの中に入っていたり、中に着た服の袖や裾が中途半端に見えていたり、アウターの上から斜めにネックレスがかけられていたりと、あえて不完全なスタイリングにしている。
こういったルーズなスタイリングは“美しくなくてはいけない”というファッションの“型”から逸脱することの可能性を示しているのだろうか。中間のボタンが一つ外れていても、裾が折れて歪んでいても良い、と言える寛容さを感じさせた。
バッグで目を引いたのは、片方の面には“FAKE”、もう片方の面には“NOT”の文字をあしらったGGモチーフのトランクケースやハンドバッグ。アイコニックなモチーフにヴィヴィッドなカラーであしらわれたメッセージが強い主張を放っている。
また、リバティプリントを採用したハンドバッグも登場。ピンクや水色など、淡く柔らかな色彩の小花模様に、リバティ ロンドンとグッチのロゴをダイナミックにフィーチャー。フロントにはホースビットをあしらい、クラシカルな表情に仕上げている。