アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen) 2020年秋冬ウィメンズコレクションが、フランス・パリで発表された。
今季クリエイティブ・ディレクターのサラ・バートンの着想源となったのは、イギリス南西部のウェールズで出会った伝統工芸。レッドとブラックを基調にしながら、古来より伝わる温かみのあるモチーフを、コレクションの中へと落とし込んだ。
コレクションで散見されたのは、ウェールズ由来の伝統的なチェック柄。アシンメトリーなデザインが目を惹くチェック柄ドレスやウールコートは、黒羊のフリースから丁寧に織られる温かなブランケットを着想にしたもの。また“プリンス・オブ・ウェールズ”と称される高貴な佇まいのグレンチェックは、ブランドでお馴染みのテーラードジャケットへと登場。黒地のパネル模様と組み合わせることで、エッジを効かせたモダンな一着へと昇華させている。
職人たちによる繊細な手工芸は、形を変えて現代へと蘇る。ウェールズの伝統的なキルティングがイメージソースとなったローズピンクのトレンチコートは、艶やかなシルクジャカードに浮かび上がる立体的な表情が印象的。
また美術館の所蔵作品である動物モチーフのキルティングは、シングルジャケットへと変身。ライラック、グレー、ブラックからなるグラフィカルなフランネル生地の上には、よく目を凝らすと鳩やパンサー、馬が潜むユニークな一着となっている。
今季のコレクションについて、“女性や友人、同僚、家族へ贈るラブレター”だと語るサラ・バートン。その象徴的な愛のモチーフとして登場したのは、ウェールズ発祥のデコラティブな木製スプーン“ラブスプーン”だ。ハートやリーフ、トリなどをシンボルに持つそのスプーンは、古くから愛情の証として現代へと繋がれてきたもの。コレクションの中では、レースへと姿を変えて、本来ハードなブラックレザーのドレスをロマンティックに飾っている。
ショーの終盤にかけては、クチュリエの繊細なテクニックが光るドレス郡が登場。こういったピースもやはり、ラブスプーンやウェールズの伝統的な刺繍をモチーフにしているのが特徴だ。また足元には、ポインテッドトゥで股下まで伸びるロングブーツを、首元や耳にはメタリックなジュエリーを合わせて、ブランドらしいスパイスをきかせた着こなしを提案していた。