イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)が、2013年6月27日、2014年春夏コレクションをフランス・パリで発表した。イッセイ ミヤケは先日、これまでデザインチームで手掛けてきた同ブランドのデザイナーに、入社4年目で1985年生まれの高橋悠介を起用することを発表。今回の2014年春夏がそのファーストコレクションとなる。
初の舞台で高橋が掲げたメッセージは「窓を開けて、世界を見よう」というもの。
コレクションのポイントとしては、
①世界を旅して受けたインスピレーションのクリエーションへの昇華
②フォルムや色、体の動きの探求
③伝統的な手仕事による染めの技術の探求
――にある。
特に染めへの探究心は特筆に値する。ファーストルックのモンドリアン調(黄色はない)のセットアップは、板締めで生地を黒く染めた後に、赤と青をさらに捺染プリントした職人技を駆使したもの。ひとつとして同じ表情にならない偶発的な滲みやムラが、手作業の味わい深さと優しさを生んでいる。
スタンドカラーのブルーのロングシャツは、職人の手による「竜巻絞り」の手法を用いている。通常、絞り染めは色を染める技法だが、今回は色を抜くことでランダムなブリーチ調を表現。若い世代に好まれそうな80年代風に仕上げている。そのほか、バティックのひび割れ柄のコートやパンツ、ブルーとグレーのグラデーションの間にリフレクターのような白いラインが光るジャケットなど、日本の伝統的な染色技術を掘り起こして進化させた表現が多く見られる。
ヨーロッパの教会を彷彿とさせるモザイク柄のシャツや、バリの民族衣装を思わせるバテックプリントのシャツとショーツなど、旅から着想したであろうアイテムも印象的。小物では、レザーのサイドゴアブーツに注目。逆三角形型のサイドのゴムを上手く使ったカラフルなデザインに、歩きやすそうなソールを備え、ブーツとハイテクスニーカーを組み合わせた独創的で魅力的な仕上がり。
全体的には、これまでのイッセイのテキスタイルや染色技法へのこだわりを伝統継承しつつ、軽やかでストリート感のある若者好みのテイストを加えている。既存の顧客をキープしつつ、新しい顧客にアピールする――伝統あるブランドを継承するにあたり必ず遭遇するこの高い壁を、85年生まれの高橋は乗り越えている。自分でデザインしたサイドゴアブーツでガードレールをひょいと跨ぐように……。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)